なんと安直な


「ところで、ユノはこれからどうするんですの?」

再会と勝利の余韻も冷め始めた頃のナタリアの言葉でした。

そうですね。
アニスやイオンくんは当然ダアトに帰るのでしょうが、私はどうしましょうか。
音素も戻りきっていないことですし、帰っても何もできないんですよね。

だけど今更観光旅行をする気分でもないし、
ダアトに戻って自堕落に過ごすのが妥当でしょうか。

「言っとくけど!戦力にならないユノはお断りだからねっ!」
「はぁ!?」
「ヴァン謡将のせいで神託の盾減っちゃって大変なの!
 教団の建て直しとかもあるし、ぶっちゃけ邪魔っていうか…!」
「失敬ですね!それこそ人手が必要でしょう」
「サボリで名を馳せるユノがそんな仕事するわけないじゃん!」

言い返せません。
ええ、確かにやらないと思います。やりたくありませんし。
黙り込んだ私に次々と生ぬるい視線が突き刺さります。

「じゃあさ、ユノ」

口火を切ったのは、意外にもガイでした。

「俺と一緒にグランコクマへ行かないか?」

「…は?」
頭の中で一、二度その言葉を反芻させた末に出たのは、疑問の声でした。
しかし眉をしかめる私とは対照的に、ガイの表情は真剣そのものです。

「いや、俺もガルディオス伯爵として帝都へ行く予定だからさ。
 よかったら一緒にと思って」
「冗談は顔だけにしてください」
「まあ、よろしいのではなくて?ユノも帝都へ行きたがっていたでしょう。
 …それに貴女、マルクト人らしいではないですか」

「…はぁ!?」
ええ、すみません。先程の声と被りました。
だけど予想外の台詞がバンバン出てきて人語を解せないのですよ。
え、ていうか、ナタリアさん?それ、なんで知って…

「………ルーク!!」
「えっ!?あ、いやっごめん!隠すことじゃないって言ってたから…」
「べらべら喋ることでもないでしょう!?」

私の声に、しゅんと小さくなるルーク。
可愛いなんて思ってませんよ!何してるんですかこのガキ!
大体決戦直前に仲間へする話じゃないでしょう…!

「それで?どうするんです」
「どうするもこうするもないです、ダアトに」
「だーめーっ!!」

アニス、うっさい!

確かにグランコクマへは行ってみたいと思っていましたが、
それはあくまでも観光旅行の一貫としてですから。
ガイの口ぶりからすると、滞在しろって意味合いのほうが強そうでしたし。
冗談じゃありません。
宿だって安くないんです、部屋を借りるのも冗談じゃない。
手軽に自堕落に過ごすにはダアトが一番じゃないですか!

完全に喧嘩腰となったそんな私に、ジェイドが一言。

「もしグランコクマへ来るのなら、宿の準備をしてあげてもいいですよ」
「行きます」

後で思えば、なんと安直な決断だったのでしょうか。

兎にも角にも、とりあえず。
私のグランコクマ行きは決定したのでした。


= = = =
次から後書き的なもの。苦手な方ご注意ください


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