乗り越えた少女に


ルーク達が帰ってきたのは、その翌日のことでした。

外殻降下は凄まじくゆっくりな速度で行われたので、
妙な浮遊感がある以外は特に問題ありませんでしたね。やや残念です。
地震は好きじゃないので好都合ではあるんですけれど。

「おかえりなさい、皆さん!」
「お疲れ様でした」

待ちかねたイオンくんが駆け出し、私もそれに続きます。無論歩いて。
並列していた一同の中から真っ先に飛び出したのはアニスでした。
イオンくんの身体を受け止め、幸せそうに微笑みます。

全員が傷だらけで疲れているようですが、満足そうですね。
なによりです。

では私は私で、約束を果たすとしましょうか。

「ティア」
微笑みながらもどこか浮かない様子のティアへ歩み寄ります。
泣きそうな顔で笑う彼女は痛ましく。
思わず、身長的な問題で少し無理はありましたが、多少頑張って。
彼女の身体を、抱擁しました。

「頑張ったね。大変だったね…おかえりなさい、ティア」

周囲から面食らったような、驚きの視線が投げかけられましたが。
どうでもいいです。そんなのに興味はありません。
今はただ。
目の前にいる、苦境を乗り越えた少女に、労いを。

「……ありがとう。ありがとう…ユノ…」
涙を混じらせながら、目を伏せながら。
ティアは静かに、私の背に両手を回しました。

…うむ。やっぱり身長、あと三センチは欲しかったなあ。


prev next

戻る
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -