影ながら


翌朝。
昨日の曇天が嘘のような日和の中、一同が揃いました。

ここで待つと約束してしまったので、私も見送りです。
アニスはまるで導師守護役のごとくイオンくんに並ぶ私に、
安心したような、牽制するような複雑な微笑みを浮かべました。

「僕はここで皆さんをお待ちしています。
 ですから全ての決着は、…アニス。貴女に見届けて貰いたい」

たおやかに微笑み、アニスの手をとるイオンくん。
アニスは大きく頷き、活発な声で応えました。

「では、いよいよですね。ルーク、準備はいいですか?」
「勿論だ―…みんなも、いいか?」

一同を見渡しながらの声に、各々の反応が返ってきます。
ティアを筆頭に随分と緊張した面立ちですが、
誰も弱気になってはいないようですね。
何よりです。

「ティア」

ヴァンをあやめてでも止めるという決意表明をした彼女に、声をかけました。
決意と覚悟の固まった瞳が、私を見据えます。

「頑張ってくださいね。約束は破っちゃいけないものですよ」
「…ええ。待っていて、ユノ」

ふと表情を和らげたティアに、主にアニスからの疑惑の目が向きます。
答えるつもりはありませんけどね。一応内緒です。

ともかく。

「アブソーブゲートからの逆流を止めて、外殻大地を降下させる…
 きっと戦いは避けられませんわ。各々、精一杯頑張りましょう」
「ミュウも頑張るですの!」

小さな手を伸ばして主張する小動物に、多少場の空気が緩みます。
…ていうか、若干一名は緩みすぎです。かわいいのはわかりましたから、
先程までのシリアスモードを早急に迎えに行ってください。

ミュウを抱え上げたルークが、号令をかけます。

彼らの背は確かに戦場へ赴く戦士のものでありましたが、
…前から見ると、先陣を切る人間がチーグル抱えてるんですものね。
最後の最後でもしまらない一同です。

まあ、うん、あれです。
頑張ってくださいね、皆々様。
不肖ユノ・リーランド。影ながら応援していますから。

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