わからなかったんです


ルークはしばらく、言葉を発しませんでした。

あまりに黙り込んで俯いているので、私が困ったくらいです。
…やっぱり失望したんですかね。
もっと悲劇的に脚色して誇張させるべきだったでしょうか。

「……本当に」

下を向いたまま、独白のように呟かれた声。
「本当に、面白くねえよ」
それだけを呟いて、ルークは再び黙り込んでしまいました。

思っていたよりでかく失望された様子ですね。
平謝りでもするべきでしょうか。

「そんなの、幸せなわけないだろ。…笑えるわけ、ないだろ」
「何故です?」
「何故です、じゃねえよ…!」

顔を上げたルークの翡翠の瞳は、揺らいでいました。
私の錯覚でなければ、涙すら浮かべています。
…?何故でしょうか。意味がわからないんですけど。

「いいから、お前は友達と家族を作れ」
「は?」
「大事な人を作れ。誰でもいいから、大切な人を作れ」

ルークの両手が、私の両肩を掴みます。
真摯な瞳が間近にありますが…正直訳がわかりません。

「価値に気付いてないんだよ。持ってるものも、落としたものも。
 "人の生死を本気で考えられてない"…!ユノは人間なんだろ!?」

叩きつけられた叫びに、しばし絶句します。
声が出ませんでした。
…違いますね。言葉が出ませんでした。
どうやって反論すればいいのか、全然わからなかったんです。

「!」

ルークは呆然とする私の手を取ると、ふいに立ち上がりました。
そしてそのまま雪の中を歩み、進んでいきます。

「ちょ、…何してるんですか?」
「みんなのところに行く」
「はぁ?」

苛立ちを隠そうともしない私の声に、彼は振り返り。

「今度は俺が、ユノに教えてやる番だからな!」

と、自信満々…意気揚々?と、宣言しました。
あー、やばい。超逃げたいんですけど。…帰っちゃだめですかね?

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