全然マシ


私が生まれたのは、多分ホドですね。

…あー、予想通りの素敵な反応ありがとうございます。
ええ、マルクト人なんですよ。私。
多分ですけどね。

物心ついた時には、養育施設にいたんです。

今で言えば、そうだな…タタル渓谷が一番近いでしょうか。あのへんです。
物心つく前のことは覚えてませんから、
棄てられたのか誘拐されたのかどうなのか全然わかりません。

ただタタル渓谷から一番近い街はホドですから。
だからそうなのかなぁ、と思っているだけです。違うかもしれません。
早速逸れましたね。戻します。

その養育施設、私のほかにも多くの子供がいましたけど。
平たく言えばただの犯罪組織でしたね。
管理人?が子供を使って強盗だの殺人だのさせてるような人間で…
だから物心つくと同時に人殺してました。私。

…気持ち悪いですか?ごめんなさい。
だけどそういう世界もあるんですよ。テストには出ませんけどね。

それでですね。
十歳…いや、八歳?九歳だったかな。とりあえず、そのくらいの時。
ふと嫌気が差したんですよ。ああ私何してんだろうって。
切っ掛けはなんでしたかねえ。お腹でも空いていたのかもしれません。
とにかく、思ったんです。
こいつムカつく、ぶっ殺しちゃおうって。

よく燃えましたよ。

子供は逃げていたみたいですよ?全員かどうかわかりませんけど。
私が確認したのは管理人と施設の炭だけですから。
他のはどうだったかな…興味なかったから、見ませんでした。

とにかく、私は自由になったんです。

*

それからは適当に生きてました。
傭兵紛いのことしたり…まあ、結構なんとかなるものですよ。
そんなある日、とある依頼を受けたんです。

あの子供を殺してくれって。

検討つきました?ええ、それがイオンでした…被験者イオンでした。
私、学はありませんでしたけど、流石に導師くらいはわかってましたから。
勿論断ったし、騒ぐ依頼人に手を焼いていたんです。
で、あまりに騒ぐから殺そうとしたら、見つかっちゃったんですよ。

イオン?いえいえ、ヴァンにです。
イオンも一緒にいましたけど、私を制したのはヴァンでした。

それで、まあ色々あって…導師守護役になりました。
想像もつかないでしょうが、被験者イオンはすっげー性格悪かったんですよ。
この妙な丁寧語は導師守護役になる際叩き込まれました。
その前の口調?えへへ、忘れちゃいましたっ。
キモイ?ごめんなさい。今のは少し調子乗りました。

その後神託の盾騎士団で働いているうち、イオンが死んで。
解雇されて。職場を転々として。
今に至ります。

*

はい。終了です。
本当に面白くもなんともなかったでしょう?

ガイや貴方の過去と比較したら、全然マシな人生でしょう?

もっと悲惨なのを想像していたのなら、一応謝罪はしておこうと思います。
だけど、私は悪くありませんよ。
悲劇を望まれても、応えてあげる道理がどこにあるんですか。

ではでは。ご清聴ありがとうございました。

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