返事して


何度も言いますが、ユノ・リーランドはノリと勢いで生きる適当な人間です。

なので、脅迫されたからといって
不条理な言いつけを守るほど臆病な人間ではないのですよ。

何が言いたいかって?そんなの決まってます。
無視して発とうとしました。
リグレット達に加え、ジェイド達までいるんです。
一刻も早くこの大陸から立ち去りたいと思うのも当然ですよね。

…ディスト、衛兵に捕まってましたし。

ともかく、私はケテルブルクを出るつもりだったんです。
さっきまでは。

「ちょっ…!動かないでください、死にたいんですか!?」
「……ッ黙れ!」

ケテルブルク、南入り口。
身支度をして今にも発とうという私を迎えたのは、赤でした。
それは彼の特徴的な髪色にもいえる色ですが、私が指したのはそれではなく。

ずるずると身体を引きずりながら街に入ってきたアッシュは、
その足跡と共に血痕を残していました。…どんなホラーですか!

どうやら今日昨日受けた傷ではなく、もっと前の傷が開いているようです。
でもそれ以前に、かなり危険な出血量でしょう。
私も満身創痍の上司を無視して観光旅行を続ける程非道な人間でもありません。

第七音素が使えれば、回復術をかけられたんでしょうけど。
残念ながら私はごく一般的な譜術師に過ぎないので、できません。
とにかくどこかに寝かせて医者を呼んだほうがよさそうです。

「ほら、アッシュ。行きますよ」

無遠慮に腕を掴むと、なんか結構痛かったみたいで、アッシュが目を剥きました。
あれ、なんか悪いことしましたかね?腕にも傷あったんですか?
でもまあそんなことはどうでもいいです。
この近くに安宿がありましたよね。とりあえずそこまでひきずりましょう。
ずるずるずる。

「てめっ…ユノ!ふざけん、…ぶっ!」

どうやら顔面が雪に埋まったようですが、それもスルーです。
ずるずるずる。あ、ほら!見えてきましたよアッシュ!
そこまで頑張ってください、私、きっとお医者様を呼んできますから!
…アッシュ?アッシュ!返事してください!寝たら死んじゃいますよ、多分!

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