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貴女が元導師守護役だというのは、ダアトへの初訪問の時に調べた事柄です。

最も、その時の目当ては導師本人に過ぎませんでしたけどね。
二年前の守護役総入れ替えが少し気にかかったので、調べただけです。
ついでですよ、ついで。あくまでも。

なので大詠師が私の案内役に貴女をつけたのは幸運でした。
導師イオンの人柄を少なからず察することができましたからね。
どう察したか?はは、ご想像にお任せします。

さて。
イオン様がレプリカだと気付いたのは、セントビナーでのことでした。
ええ、貴女を窓から突き落とした直後です。
まさかミュウがあそこまでいい仕事をするとは思っていませんでしたね。
次会った時に散切り頭になっているのを見つけた時は、
不覚にも吹き出すかと思いました―…おっと、暴力はいけませんねぇ。
似合ってますよ、今の髪型。以前よりもね。

話が逸れました。
イオン様がレプリカだと気付いた瞬間、貴女の存在意味が変動しました。
目の前にいる導師の過去を知る人間ではなく。
以前の、本当の導師の生前を知る人間…そんな風にね。
それ自体に問題はありません。
問題はここからです。

ユノ・リーランド。
貴女、導師守護役を解任されてから階級が転がるように落ちてますよね?
まさか上司が左遷されたからだとか、そんな理由を本気で受け止めていたわけではないでしょう。
貴女はそれなりに頭のいい人間だ。…嫌味ではありません。本心です。

つまり。
弱くなっているんですよ、貴女は。

第六師団へ移り、第二師団へ移り、その間に。確実に。
もしも導師守護役を務めていた頃の貴女なら、
陸艦の窓から突き落とされるなんて事態にはならなかったでしょう。
私たちに大人しく捕まっていることもなかったはずです。
勿論、先ほどシンクを圧倒することもできたのではないですか?
リグレットと同じように。

じれったいですか?なら、結論を言いましょう。

ユノ・リーランド。貴女は一人では戦えない。
時には導師イオン。時には、罪のない街人たち。
背後に"守るもの"がないと、貴女は何とも戦えない。勝利できない。

わかりますか?
口癖のように他人への関心を否定し、拒絶している貴女が。
他の誰よりも、他者に依存し、頼りきっているんですよ。

わかりませんか?
嘘はいけません。本当はわかっていたのでしょう?

今の貴女の表情が、それを雄弁に語っていますよ。

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