焦げてはいますが


ちょっと後悔中です。

「ちょっと、熱い!婆さん、熱いですっ!!」
「あらあらごめんなさい!お嬢さん、周りと見分けがつかなくてねぇ」
「ふざけんなよ!?」

周囲の神託の盾は失念していませんでしたが、
シェリダンの皆さんのことは失念していました。完全に。

どうやらルーク達に助力していたらしい彼ら、一応私の味方でもあるのでしょう。
しかし。
敵は神託の盾、私も神託の盾。当然のように服装は制服。
見分けがつかないとの言葉通り、火炎放射に巻き込まれまくっています。
私は老人相手でも労ったりしません。言葉遣いだって乱れます。

やめてください。やめてください、本当に!
これ以上私に炎への恐怖心を植え付けないでください。
そのうち第五音素の術すら使えなくなりそうです。得意なのに!

いっそ建物の中に逃げて貰って、私が一人で戦ったほうが楽なのですが。
そう言っても聞いてくれなさそうですね。仕方ありません。
私も焼きが回ったものです―…いえ、焦げてはいますがそういう意味ではなくて。

「シアリングソロゥ!」

また第五音素ですか。いい加減にしてください。
リグレットが撃ち出す、巨大な火の球。私の術とは桁違いの大きさです。
避けたら…あたりますよね、背後の老人たちに。
先程腹をくくったんです。見殺しにするのは止しましょう。
あの炎球、結構鈍いですし。詠唱も間に合います。

「スプラッシュ!」
地面から噴出す水流が、炎球を真上に打ち上げ…られませんでした。
それほど上級の術ではないので、軌道をずらすのが精一杯です。
当たらなきゃいいんですよ、私たちに。

リグレットの舌打ちが聞こえますが無視です。
術発動から長銃を構えるまでの流れは、考える前に身体を動かせます。
目標は無論、リグレット。
周囲の兵士を街民が抑えていてくれるからこその一撃です。

長杖に収束する音素に気付いたのか、リグレットが駆け寄ってきますが。
もう遅いです。直撃して是非くたばってください。

「エレメンタルマスター!!」

先程の炎球よりも若干大きい直径の、様々な色が交じり合った弾丸。
本来は一色ずつ撃ち出す技ですが、少しアレンジしました。
さらにレーザーまでつけます。大特価です。
空間を抉るように撃ちだされた球は、リグレットに正面から激突し。
そのまま彼女を攫って、街の外まで飛んでいきました。

「……うん」

凄まじい疲労感ですが、達成感もすごいですね。
周囲の神託の盾たちが口を開けて唖然としているのも実に面白いですし、
さらに優越感までプラスしてしまいましょう。

ぴったり三分。
ルーク達は港までいけたのでしょうか。
ついでですし、様子を見に行ってあげるのも悪くないかもしれませんね。

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