ムカつくから
時には船を使いつつも、長杖で飛行して辿り着きました技術者の街。
シェリダンに来るのは初めてです。
音機関を駆使した街並みとのことなので、
目的を忘れて少し楽しみにしていた節があることを告白しましょう。
そして懺悔します。
楽しみになんかしていてごめんなさい。
そして後悔させてください。
来なきゃよかった。興味もないくせに、首を突っ込まなければよかった。
見てしまったら、助けなきゃいけないじゃないですか。
「フィアフルフレア!!」
上空から、遥か下方にいる彼女に向けて炎弾を撃ち出します。
持ち前の身のこなしで直撃は避けられましたが、
行動の邪魔くらいにはなったようですね。
目的達成。じゃあ帰りましょうか!迅速に!!
「ユノ!?」
「…ど、どうも〜…今日も良いお天気ですねぇ…」
突然の奇襲、というか救援に唖然としていたルークが、私を見て叫びました。
彼の周囲にいるティアやジェイドらも、声に出しはせずとも
だいぶ驚いている様子です。…攻撃された、当のリグレットとは違って。
「…成程ね。よくわかったわ、ユノ」
飛びのいた体制のまま固まっていたリグレットが、ゆっくりと立ち上がり。
屋根の上あたりの高さで停空していた私に、銃口を向けました。
「お前は閣下の敵。…敵は、生かすわけにはいかない!」
彼女が引き金を引くのと、私が飛び降りるのはほぼ同時でした。
リグレットの譜弾は空を切り、
私は神託の盾たちによる包囲網の真ん中へ着地します。
技術者と思しき老人たちの視線が刺さりますが、どうでもいいです。
そして私は、ルーク達へ指を突きつけて。
「三分」
と端的すぎる単語を言い放ちます。緊迫した空気もなんのその。
いつだって自由に、いつだって適当に。
それが私ですから。
「三分、こいつらを足止めします。良いですね?」
舐められたものね、と小さな呟きが聞こえました。
ええ、ルークたちのためじゃありません。世界のためでもありません。
リグレットやヴァンが、ムカつくから。
ムカつくから邪魔をするんです。
ただ、それだけ。
リグレットは、走り去る背中を追おうとしませんでした。
代わりに私を睨み、再び銃口を向けて。
三分もいらないわよ、と。吐き捨てました。
それこそ、舐めないで欲しいですね。
私を誰だと思っているのですか?
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