首を傾げ


ディストがダアトにいる時間は、それほど長くありませんでした。
ていうか何しに戻ってきたんでしょう、あの人。

どうやら私はダアト、というかヴァンやモースと完全に敵対してしまった
ようですが、それはこの場所から去る理由にはなりません。

殺したいなら、いつだって襲い掛かってくればいいんです。
アリエッタのように。

勿論私も黙って殺されるつもりはないので、抵抗はするつもりですが。

…と、まあ。私には珍しく意気込んでいたのですけれど。
ディストがアリエッタを開放していたようですが、すぐに去っていきましたし。
豚も帰ってきた早々、私に気付きもせず去っていきましたし。
勿論、ヴァンなんか戻って来もしませんでした。
…正直拍子抜けと言いますか、なんと言いますか。

そのまま、何事も無い日々が続きました。
特筆すべきことがないのでしません。面倒臭いですからね。

そして、現在。

「あっ」

意外にも真っ先に再会したのは、ルークご一行様でした。

「久しぶり〜ユノ」
「ええ、お久しぶりです。ダアトに用事ですか?」

方向からして、目的地は大聖堂でしょう。
ルーク達は互いに顔を見合わせて、ユノでもいいか、と囁きます。
失礼ですね。

「ユノ、あれからディストは戻ってきたかしら?」
「ディストですか?ええ、来ましたよ。すぐに消えましたけど」

ティアの顔が少し緩みます。…どうも顔色が悪い気がしますが、気のせいでしょうか。

「実は飛行譜石をディストに取られたままなんですの。何か知りませんか?」
「飛行譜石…」

アルビオールから奪われたという、あれですか。
ディストのことですし、どこかに隠したとか誰かに預けたとか、そのへんでしょう。
そうですね。ディストが重要なものを預けるとしたら。

「……ライナーかな」
「ライナー?」
「ディストの付き人です。多分神託の盾本部にいると思いますが」
「…そのライナーさんとは、お知り合いで?」

ジェイドの意図が読めない問いに首を傾げつつ、頷きます。
するとジェイドはにこりと微笑み、私の手を取って。
………ん?

「では行きましょうか。知人の命をひけらかせば、きっと渡してくれるでしょう」

ルーク達の顔が引き攣ります。
…え、ちょ、マジですか。まさかの人質リターンズですか?

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