以前よりもずっと
直してくれるそうです。
あの後散々叫ばれ喚かれ大変でしたが、直してくれるそうです。
そして前回同様、見られていると集中できないとのことで追い出されたので、
前回同様、暇つぶしに廊下を探索中です。
だけど前回のような、疲労やむかつきはありません。
むしろ疑問というか不審というか。とにかくディストが何を考えているのか、
それを考えながら歩いています。
あれだけ邪魔をしたんです。
武器を直すなんて愚の骨頂、少なくとも私なら絶対しません。
何考えてるんでしょう、あの人。
*
「できました」
二時間ほどして再び部屋を訪ねると、
綺麗に修正された長杖を携えたディストが待ちかねていました。
まさかとは思いますが、触れた瞬間暴発とかありませんよね?
…いや、この男に限ってないと思いますけど。
「ありがとうございます」
賜るように手を伸ばし、杖を掴みます。
…取れません。
ディストが掴んだまま、手を離さないのです。
何こいつ、ふざけてるんでしょうか。
「ユノ。…貴女は、誰の部下ですか」
「は?」
俯いたディストは、震える声でそう呟きました。
「今なら間に合います。私と来る気は、ありませんか」
「…来るって、なんの話ですか。私はもう何処にも行きません」
アッシュも、今度は待機ではなく帰れと言ってきたんです。
これで全てを清算したとは思っていませんが、少なくとも今は。
今この時は、私は神託の盾騎士団の一員であるはずです。
「…ヴァンは、貴女を殺す気ですよ」
「何故帰って来たんです?ずっと逃げていれば、よかったのに。」
「もうダアトに貴女が安らげる場所などないんですよ。
そんなことは分かっているはずなのに、…何故、戻って来たんです」
ぶるぶると震える両手で杖を掴み、唸るように独白して。
ディストはけたたましく、鼻を啜りました。
「だけど、今からなら間に合うかもしれません。
私の部下に、戻ってくれたら…そうしたら、きっと大丈夫です」
「…」
この口ぶりだと、ヴァンが帰ってくるまでそう時間はなさそうですね。
…そうか。ヴァンは、私を殺すつもりなんですか。
じゃあ義理とか、私の盾になっている亡霊とか、全部無視するつもりなんですね。
上等じゃないですか。
「ディスト」
私は目の前で涙を湛えているだろう男の名を呼び。
今までとか、今とか、これからとか。色々のことを含めて、続けます。
「ありがとう。ディスト」
こんなに部下思いな上司だったのなら、もっと真面目に働けばよかったですね。
今となっては、もう遅いですけれど。
どうやらもう、私に戻るという選択肢は残されていないようですから。
…彼から受け取った杖は、以前よりもずっと良い性能となっていました。
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