喜ばしい限り
「じゃあ皆さん、お気をつけて」
紆余曲折ありましたが、とうとう皆さん旅立ちの時です。
今ではガイも吹っ切れた様子なので、順調に旅路を歩むことでしょう。
「色々世話かけて悪かったな。ユノ」
「いえいえ。構いませんよ」
とにもかくにも、六神将が帰ってくるまでは私も無事でしょうし。
少しは休めそうですね。喜ばしい限りです。
街の入り口で、彼らの背を見送ります。
何度かジェイドと目が合いましたが、偶然だと思わせてください。
これが今生の別れでもないでしょう。
できれば、…別れたいのですが。あの人達に関わると碌なことがありません。
「………はぁ」
呆れや疲労の溜息ではありません。歓喜の溜息です。
ここ数ヶ月で随分と働きましたが。
やっと帰ってこれました。やっと、戻ってこれました。
とにかく寝ます。
何時間も寝れないのは、まあ…きっとバチカルのベッドが合わなかったんです。
自室の慣れ親しんだ環境でなら、三日ぐらいは寝れるでしょう。
さあ帰りましょう。今すぐ帰りましょう。
次動くのは、ディストが帰ってきた時です。
帰ってこないと困るけど、あと半年はこなくていいです、ディスト!
きゃっほー!!
*
「……来なくていいって、…言ったのに…」
「なんですかっ、その言い様は!」
場所はダアト、ディストの研究室。相変わらず汚い部屋です。
ちなみにきゃっほーから半日も経過していません。
帰ってくるの、早すぎるでしょう。
しかし幸運にもラルゴとモースの姿はなく、ディスト一人の帰還です。
…帰還?生還、のほうが正しいでしょうか?
「大体なんです、貴女。あれだけ私たちの邪魔をしておいて、
よくもぬけぬけと性懲りもなくダアトに戻って来れましたね!?」
「ええ、まあ、それは全くもって同感ですが」
自分でもどうかと思いますが。
しかし数少ない私物とか、自分の部屋とかがダアトにあるんですから。
仕方ないでしょう。笑って流してください、大人でしょう?
「ところで薔薇のディスト様」
「…もうその煽てには乗りませんからね」
こちらを睨んでそう毒づく(?)ディストですが、紅茶を出してくれました。
こうも単純で大丈夫なのかと柄にも無い心配をしつつ、
ダアトに帰ってきた本題でもある、外見上は異常ないそれを、差し出します。
「…これ、壊れちゃいました」
ディストの絶叫が響き渡ります。
超音波もびっくりなぐらい耳の痛い、凄まじい叫びでした。
…うるっせえ。
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