暇はありません


「アンタ、やる気あんの?」

第三師団の働きを遠目に見ながら、第五師団長がそう尋ねてきました。
愚問ですね。
「ええ、もちろん」
ありませんよ。
「もちろん、あります」
言えるわけないですけどね!

鳥を模した仮面のせいか、シンクの表情は窺えません。
そもそもこっち向いてないんですけどね。
だけど、苛立たしげな舌打ちはばっちり聞こえました。

「第五師団、出撃準備。第六師団は援護に行って」

後ろに控えた団員が了解、とぴったり同じに言いました。
私も言いましたよ。やる気のない私の実力を、見せてさしあげましょう。

*

魔物の種類はさまざまでした。
ウルフ系からローパー系まで、まったく統一感がありません。
リグレットなら弱点を見極めた攻撃をするでしょうね。
私ですか?しませんよ。面倒ですものね。

第三師団の魔物たちは、少々数に押されている様子でした。
一際大きなライガに乗ったアリエッタが涙目になっています。
援護、とのことなので。
唯一見分けのついているあのライガを援護しましょうか。

「フレイムドライブ!」

第五音素の塊を、ライガの進路を拓くように撃ち出しました。
ユノ、と嬉しそうなアリエッタの声。
構っている暇はありませんね。長杖を肩に担ぎ、銃弾の充填をします。

初段の射撃は普通の弾です。
次は三方向から絡みつく第一音素を込めて。
その次は体内を侵す第四音素を込めて。
最後に、第五音素による爆発力を備えた弾。

援護も何もあったもんじゃないですね。
味方は退避したようですけれど、私の正面には草ひとつ生えていません。
ひゃっはー。殲滅成功です。
ただし、正面だけなのでまだ結構残ってるんですけれど。

あとはお任せしましょうか。
「ターピュランス!」「ネガティブゲイトっ!」
私なんかより全然優秀な方々が、大層やる気のようですから。

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