真逆の方向へ


アルビオール、というらしいです。この乗り物。
本来は飛行がメインとのことですが、ディストに飛行譜石を奪われ、
陸上と海上の移動しかできないとのことです。

先程のノエルという女性はシェリダンの技術者だと名乗り、
このアルビオールの操縦桿を握っているのだとか。
凄いですね。素直に感動します。

彼女の危なげない操縦で海上を渡り、ダアト付近に接岸します。

最高責任者のイオンくんに会う目的ではあるものの、
六神将の誰かに出会えば一巻の終わりです。
ノエルをアルビオールに残し、ダアトの街に向けて歩くことになりました。

「そういえば、ユノもダアトに用事があるのよね?」

私と同じく、戦闘メンバーから外れたティアが尋ねてきました。
曖昧に言葉を濁す私。
…いくらティアでも話しがたい、間抜けな用事です。

幸い、ダアト付近の魔物は彼らの相手になる強さではなく、
戦闘メンバーを入れ替えることなく街へ辿り着くことができました。

久しぶりのダアト。
感慨深くはありませんが、どことなく懐かしいような気はします。
神託の盾騎士団の姿は少なかったため、難無く教団内に進入することができました。

いえ、正直敵が多いのは教団内の方なのですが。
『あれリーランド奏長?いつ帰ってきたんだ?あいつら誰だ?』など。
聞こえてるんですよ!
総長に刃向かってもリーランドなら大丈夫だろうってどういう意味ですか。
あなたたちの中でリーランドは何者なんですか。

ティアたちが引き攣った笑顔で私を生ぬるい視線で包みます。
やめてください。
再会してからこの人たち、私の扱いを変えたように感じます。

「………」
「アニス?どうしたんだい」

真っ先にからかいそうなアニスが、珍しく俯いています。
しかし、ガイが声を途端に彼女はいつも通りの笑顔を形作り。
パパやママに聞けば、六神将の動きが分かるかもと発言します。
…オリバーとパメラですか。
アニスとは違う意味で苦手意識のある二人です。

「よし。話を聞いてみよう」

ルークが頷き、移住区と真逆の方向へすたすたと歩いていきます。
慌ててその後を追い、進路を正すガイに、誰もが呆れた視線を送りました。

*

ローレライ教団移住区。
壁にも床にもトクナガが溢れるタトリン夫妻の自室に辿り着いた私たちは、
相も変わらずにこにこと人の良い笑みを浮かべる彼らに声をかけました。

アニスを完全に手玉に取る、朗らかな空気。
言い方こそ悪いかもしれませんが、彼らと会話すると私は文字通り
脳が腐るような気分になります。…もしくは、その逆かもしれませんけれど。

タトリン夫妻は意外にも多くの情報を握っていました。
ラルゴ、ディスト、モースは未だバチカル。
リグレットもベルケンドから戻っていないようで、
シンクとアリエッタはそれぞれラジエイトゲートとアブソーブゲート。

ちょうどものけの殻です。
アリエッタはもうじき帰ってくるそうですが、即座にイオンくんに
接触することができれば、彼女が帰る前にダアトを去ることができるでしょう。

けど、それはルーク達の場合です。

「ディスト、まだ帰っていないんですか」

さて。私はこれから、どうしましょうかね。

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