関わりたくない


アッシュが手にしているのは、古びた大きな古文書でした。

ほぼ無言で研究所を後にしましたが、どうも議論する空気ではなく。
宿屋へ辿り着いてからもそれは変わりません。
彼らの知り合いらしい女性と多少の会話をしましたが、変わりませんでした。

そして。
少し嫌そうながらも口火を切ったのはアッシュです。
イオンから渡すよう頼まれたと言う彼が持つのは、星の形にも見える古文書。
ジェイドは丁重にそれを捲り、ほんの少しだけ眉根を寄せました。

創生暦時代の古文書。
教団の禁書でもあるそれは、導師であるイオンくんにしか取り出せない物です。
外殻降下の助けになる、とアッシュは言いました。

…外殻降下。
今まで触れていませんでしたが、それが彼らの目的。
アクゼリュスに続いてセントビナーが崩落したオールドラントは、
破滅の危機に晒されていたともいえるでしょう。

一気に落としたら壊れるから、ゆっくり落とせばよくね?

とどのつまりそういう事です。端的に言えば。
私個人としては、そういった大事には関わりたくないのですが―…
どうも私抜けますとは言い出し難い雰囲気です。

「ふむ。これは読み込むのに時間がかかりますね。
 話は明日でも構いませんか?」
「いいんじゃないですか?それを読めるの、大佐くらいでしょうし」

それに。
アニスが笑顔のまま、どこか冷徹な光を瞳に宿し。
作戦より前にすべき話があるよね、と、一人を目線で示します。

ええ、まあ、当然ですよね。

「…俺とヴァンは、ファブレに来る前からの旧知の間柄だった」

水面に石を落とすような声でした。
ガイが話す過去は、人間として当然で、
だけど私には到底理解できないだろう憎しみに満ちたものでした。
家族の仇。祖国の仇。
復讐のためにファブレ家へ忍び込み、ヴァンと再会し、そして。

「だが、今は違う。あいつと俺の道は違ってしまった」
「…それを私たちに信じろと?」
「こちらが疑り深いのはご存知ですよね」

恐らくルークに投げかけただろう言葉に反応したのは、ルーク以外の面々です。
私はこの件に関しては完全に蚊帳の外、というか、
そもそも関わる必要性もないしぶっちゃけどうでもいいといいますか。
とにかく沈黙を貫いています。

「………ユノ」

一連の流れを見守っていた上司が、私を呼び止めます。
小さく顎で出口を示されたので、なるほどと少し納得するような気で。

仲間同士が語らう部屋を、後にしました。

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