私が言える


待てよお前、今の話ってどういうことだよ。

誰かが私にそう言う前に、背後の扉が大きく開け放たれました。
あら、と。飛び込んできた人影を見て、少し驚きます。

「待ちかねたぞ、アッシュ」

ヴァンが招いた本来の客、ヴァンが必要とする本当のルーク。
私の上司は一瞬だけナタリアを視界に入れましたが、すぐにヴァンを睨みつけました。
…アッシュの愛は魔界より深いですね。凄いです。

「お前の超振動がなければ、私の計画は成り立たない。
 私と共に来い、アッシュ。共に新しい秩序を築こうではないか」
「断る!超振動が必要ならそこのレプリカを使え!」

レプリカ、という単語にルークが少しだけ表情を曇らせました。
そして。
その後にヴァンが綴った言葉は、更にルークを深淵に叩き落すこととなるのです。

「雑魚に用はない、あれは劣化品だ」

ヴァンがルークに向ける目には、侮蔑のみが込められています。
そして、トドメとばかりに放たれた"捨て駒"という言葉。
それに激昂したのはルークではなく、ティアでした。

「今の言葉、取り消して!!」

今にもヴァンに掴みかかりそうな彼女の腕を、アニスが制します。
一方ルークはといえば、絶望的な表情で立ち尽くしたまま、ガイに支えられていて。
ナタリアとジェイドはただ、怒りだけを燃やしています。
…泥沼です。
しかし、私が言える言葉はもう、何一つとしてありません。

ヴァンはリグレットを伴い、もう話すべきことはない、と締めくくり。
部屋を出る前、おまけとばかりにこう言い添えました。

「いつまで劣化品とお戯れになられるのですか?
 ガイラルディア・ガラン・ガルディオス伯爵」

ガ…?すいません、今なんていいました?

「私の気持ちは今でも変わらない。かねてからの約束通り、
 貴公が私に協力するのなら、喜んで迎え入れよう」

底冷えするような笑顔を残し。
ヴァンとリグレットは、扉の向こうへと消えました。

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