呪いのような、


「バチカルでは派手にやってくれたようですな、
 特務師団長!そしてリーランド奏長!」

ベルケンドに着くやいなや、神託の盾兵がそんなことを言ってきました。
見覚えのある兵士ですね。
以前タルタロスにいた兵士でしょう。どうでもいいですけど。

ともかく。
リーランド奏長はされおき、特務師団長とは。
まさかこの人、アッシュとルークを間違えているのでしょうか。

「ヴァン謡将に会ういい機会です。おとなしく捕まりましょう」

ジェイドの言動に倣い、大人しく頷きます。
兵は怒りというか不機嫌そうに踵を返し、私達の先導役に買って出ました。

*

第一研究所を進み、案内された個室。

ヴァンとリグレットはティアの激昂した声をあしらい、ルークの言葉をあしらい。

あまりに気持ち悪い、信じがたい計画を、吐露しました。

ヴァンがホド出身者であることは知っていました。
彼が預言を憎んでいることも知っていました。
…以前、馬鹿みたいに必死で調べた事柄ですからね。

彼の悲願とも呼ぶべき計画は、以下の通りです。
ユリアの遺した預言に縛られ、個々と自我を無くした人間の救済のために。
その憐れな人間に破滅と粛清を与え、
大地から形成したレプリカを以って、新しい世界を創造する。

どこかで聞いた話です。
そして。

「胸糞悪い話ですね。ヴァン謡将」
「…お前がそれを言うか、ユノ・リーランド。
 お前もまた預言を憎み、嫌悪していると思っていたのだが」

本当に予想外だとでも言うように、大仰なそぶりを見せるヴァン。
憎む?嫌悪する?私が預言とかいう、目視できないものを?
馬鹿馬鹿しい。

「興味ありませんよ」

ルークやティアの困惑した瞳が私に向けられます。
しかし、それもまた、どうでもいいことで。
どうでもよくなければ、いけないことで。

「ただ、模造品に用はありません。それは世界じゃない世界ですから」

「…それが二年前に黙した、お前の主人の悲願であろうともか」

「ええ」

この男は知らない。
たとえイオンの悲願が、レプリカ世界の形成であろうとも。
私はあのクソガキが遺した、呪いのような、一方的な約束は忘れない。

あの呪いを厳守することに勤めるのが。

私にできる、彼への最大の償いと恩返しになると、信じていますから。

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