昨日描かれた


私は"導師イオン"に、特別な感情は抱いていませんでした。

むしろ神託の盾自体にも特別な感情を持っていません。
物心つく前に親がいなくて、施設で育って。
退屈で面倒な施設から逃げて、辿り着いたのが神託の盾でした。

ちょっと違法な施設だったので、
敵対関係にあるマルクトにもキムラスカにも行けなかったんです。
中立な立場の宗教はこれ以上ない身の置き場だったんですね。
正直預言とかにも、興味ないです。

利用できるならするし、縛られてても実感がないなら構いません。
実感がないってことは、あってもなくても変わらないってことでしょう?

話が逸れましたので、戻します。
そんな気持ちのまま勤めていたので、導師イオンは
仕事の上での守護対象としか思っていませんでしたね。
絵画とか、像とかと同じ扱いです。
導師守護役なんて呼び方ですが、結局は警備員ですよ。

私は物の価値が分からない人間なので、
昨日描かれた絵を何千年の歴史がある絵画と言われても多分わかりません。
ハリボテの像を何億ガルドの値打ちがあると言われてもわからないでしょう。
興味が、ありませんから。

*

「報告にあった数は150。だけど200前後と考えたほうがいいだろうね」

現地に到着して十分ほどが経過しました。
参謀長官も兼任する第五師団長が作戦を凄まじい量の団員に伝えます。
小難しいのでざっくり理解しましょう。

先鋒は第三師団、次に第五師団で、後方支援は第六師団。
私は直接切り結んだりしなくてよさそうですね。
よかった。力は強くないし、死にたくないですからね。

「ユノ、がんばろうね」
「ええ。頑張ってくださいね、アリエッタ」

照れたように微笑んで、アリエッタがライガに乗って走り去る。
今はライガだけだからいいけれど、
ワイバーンとかも一緒だと危ないんですよねえ。
一緒に撃っちゃいそうです。私の銃はリグレットと同じ音素の凝縮された
塊で実体はありませんが、彼女のものとは構造が違いますから。

あんな小さな女の子、粉々になっちゃいますね。

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