うってつけ


拝啓上司様。
現在バチカルにて待機中、異常なし。

もうすっかり書き飽きた文面を綴り、傍らの鳩に紙を噛ませます。
いってらっしゃーい。
窓から飛び立った鳩に手を振って、やっと一仕事終了です。

あれから数日。
神託の盾、及び教団の人間を注視しろとの命令を手紙で受けた私は、
もう少し高い位置にある安宿に身を移し。日々この面倒くさい労務に勤しんでいます。
注視しろと言われても、特に目立った者はいません。

つまり。暇です。

「うーうう…あああああーっ!!」
枕に突っ伏し、絶叫。
もう発狂寸前と言っても差し支えないほど暇なのです。許してください。

私は休養を愛してはいるものの、近頃の反動でしょうか。
続けて八時間も寝たら全身と頭に激痛が走るのです。なんと悲しいことでしょう。
それもこれも全部ヴァンのせいです。
あいつがこんな面倒な動きをしなければ、私は追わずにすんだのに。
そもそもあいつが私を―…

……はい。思考、強制終了です。
私があの男と会ったのは四年ほど前ですが、ここ二年間ほど、
あの時期のことを思い出そうとすると気分が悪くなります。

しかし、思考というものはそう簡単に止まるものではありません。
そうですね、どこかで盛大に暴れでもしたら収まるでしょうか。
でもバチカルから出るわけにも行きませんし、街中で暴れたら逮捕されます。
ラルゴがいたら一発解決ですが、いる訳もなく。
さて、どうしたことか。

「あ」

視界に入った、闘技場の文字。
全くどうかしていたとしか思えませんが、とりあえず。
このストレスを解消するにはうってつけだと思いませんか?


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