新しい存在


不慮の事故で落ちてしまったら、また上がるしかありませんよね。

というわけで、アッシュ発案の作戦を実行するため、
現在位置はユリアシティからタルタロスへとシフト致しました。

タルタロスもすっかり馴染んでしまいましたね。盗品なのに。

作戦は、面倒なのでざっくりと説明しましょう。
タルタロスをセフィロトに乗っけて、吹き上げる記憶粒子に任せて
どかーんと外殻に打ち上げるんだそうです。
随分と横暴ですが、他にタルタロスを外殻へ上げる方法はないでしょう。
説明終了。

ちゃんと聞いていないと嫌味を言ってきそうなのが二名ほどいるので、
それなりに頑張って聞いていました。嫌な努力ですね。

タルタロスの操縦部屋に入るのは初めてです。
中央の操作盤にジェイド、窓際の操縦席にアッシュ、ガイ、私。
他は通常席にて待機です。かなりの揺れが想定されるため、安全のために。

ティア、ミュウ、ルークの姿はありません。

ティアは、私たちと共に外殻へ戻る理由がないと言い。
ミュウは、ルークの傍から離れたくないと言い。
ルークは未だ、昏睡状態です。

精神的な理由だとアッシュは言っていましたが、どうでしょうね。
久々に言いましょうか。興味ありません。

今の私は、ただアッシュについていくだけです。

記憶粒子に乗って外殻大地に戻る際の揺れは、凄まじいものでした。
乗り物酔いには縁がないと思っていましたが…ちょっとやばかったですね。

窓の外に広がる青い海に、一同が安堵の声を漏らします。

「うまく上がれたようですね」
「ここが空中にあるだなんて…信じられませんわね…」

皆が奇跡でも起きたかのようにはしゃぐ中、アッシュが吐き捨てるように
成功するに決まっているだろう、と言いました。
ものすごく言い方が悪いんですよね。
意味合い的には"吐き捨てる"より"呆れた"のほうが正しいはずなのに。

しかし、凄い状況ですね。
ナタリアを始め、ほぼ全員がアッシュの存在を認めています。
ルークがいた場所を塗りつぶす、新しい存在の居場所を作っています。
これってどういうことなんでしょうか。
今まで散々敵対して、妨害されてきた私とアッシュを認めて、
ルークの不在を歓迎すべきとでも言いたげな、この状況は。

まあ、当然でしょうけれど。
人の命は決して軽くないんです。虐げられて当然ですよね。
どうでもいいですし。

だけど、疑問に思っているのは私だけではないようです。

「結果、うまくいっただけだろ。失敗したら俺達皆死んでたかもしれない」

敵意を孕んだ、棘のある言葉でした。
ナタリアが反論しても、言葉の主は悪びれもせずに視線をずらして。

珍しいですね。
ガイがこんな、大人気ない真似をするなんて。

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