ああ、もう、


もっと頼み方とか、あるんじゃないですか!

前門のアッシュ、後門のヴァンです。
私に会って、ヴァンは鳥を進めるのを止め、その場で停滞しています。
その顔は恐ろしくて振り向くことができません。

「何してる!急がねえと、奴らがくたばっちまうだろうが!」

「余計なことをするな、ユノ。お前も私と共に来い!」

とんでもない取捨選択を迫られています。
ヴァンに従い、アッシュをぶら下げたまま彼について行けば、
恐らく着陸と同時にアッシュにぶった切られるか、今後の冷遇に繋がるでしょう。
冷遇。すなわち、クビです。

しかし、アッシュに従って鳥を殺せば、確実に神託の盾はクビになります。

どっちをとってもクビじゃないですか!冗談じゃありません!

「何を迷う必要がある、ユノ!」
「なにをのろのろしてやがる、ユノ!」

そ、そんなに名前を呼ばないでください!
混乱する私とは裏腹に、二人はまさに必死の形相で。
私の名前を繰り返し叫んで、自分につくようにと語りかけています。

ああ、もう、鬱陶しい!

譜術を使える体調ではないので、懐からナイフを取り出します。
以前髪を切った、あのナイフです。
くるりと回して逆手に持ち直し、忙しなく翼を羽ばたかせる鳥に近づいて。

思いっきり、振り下ろしました。

凄まじい悲鳴です。
頚動脈を傷つけられた鳥はふらふらとした動きでもがき、下落します。
赤い血が全身に浴びせられますが、この際無視です。

とにかく落ちてしまうだろうアッシュを、受け止めなければ。

私も高度を落として、アッシュの伸ばした手を取ろうと、手を伸ばします。
ぐらぐらして上手く取れません。
もう少し。もう少し、です。

指先がやっと触れた瞬間の、視界の端に。
冷徹な目でこちらを見据え、手のひらを翳すヴァンの姿が、見えました。

「ジャッジメント!」

……ああ、また、このパターンですか?

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