まだ、何かが


リーランドによる遺跡案内、終了が近づいて参りました。

長い螺旋階段の上から、燦々と日光が差し込んできています。
砂っぽく、いつ生き埋めになるかも分からない遺跡の中は
やはり気が滅入っていたようで。一同の表情も若干明るくなったようでした。

私のテンションも上がります。
やっと帰れるんですよ!ここ数日の激務ったらありません!
砂を含んだ風が吹く砂漠では飛行できませんから、とにかくオアシスですね。
ルーク達がオアシスに行くというのなら、仕方ありませんから、
オアシスをスルーしてケセドニアへ行きましょう。
そして数日滞在して休んだら船に乗ってダアトへ一直線です。

嗚呼、素晴らしき!ダアトへ!

「ユノ」

…あら。ルークが声をかけてくるのは別れてから初じゃないですか?
あれ。何故にそんなかわいそうなものを見る目で私を見るのですか。

「ユノ、…大丈夫かよ。顔ヤベーぞ」

ルークに心配されました。
…死んでも良いでしょうか。

*

「けれど嬉しいのは事実です。お疲れ様でした」

遺跡を出て、うだるような暑さ、焼ける日光の元に戻って数十秒。
アニスのように開放感を味わう間もなく、直角に頭を下げます。
あまりの切り替えの早さに数名が引き気味ですが、些細なことです。

「ユノは、これからどうするの?」

ティアの質問に、とりあえずオアシスまで行きます、と正直に答えました。
途切れ途切れに聞いた彼らの会話から察するに、
彼らはこのままケセドニアへ行き、カイツールを経由してから
アクゼリュスへと向かうようです。

キムラスカとマルクトを繋ぐための、大切な旅。
あれほど妨害を繰り返しておいてなんですが、どうも引っかかります。
まだ、何かがあるんでしょうね。
砂漠か。街か。船か。峠か。目的地そのものか。
とにかく、和平条約を結ばせないための、何かが。どこかで。

私には、関係のないことですけれど。

「ではユノちゃんとはここでお別れですね」
「別れてもらわなければ困ります。彼女は神託の盾ですよ」

余計なこと言わないで欲しいですね。この眼鏡。

とにかく。
私、ユノ・リーランドは上司と仕事に別れを告げ、帰路に着きました。

*

実際にダアトで惰眠を貪るのはこれよりずっとずっと後になるのですが、
勿論、その時の私はそれを知るよしもなく。
無様に、無用心に、無邪気に。
ただただはしゃいだ気持ちで、灼熱の砂漠を歩んでいたのです。

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