やったぁ!


あーくそ。身体重すぎです。

骨や内臓は奇跡的に無事ですね。何よりです。
やっぱり下手な付き合いはするもんじゃありません。
他はともかく、ルークとジェイドは絶対憂さ晴らしで来てました。
裏切ってないです、表返ったんです。
だから責めないでください。泣きますよ。

「三人がかりで何やってんだ、屑!」

返す言葉もありません。
「ずっと傍観してたくせに何言うんですか…」
返しますけど。小さい声で。ガイが憐れむような目を向けてきました。
悔しいので立ちます。杖が大活躍です。

再び正面に視線を戻すと、ルークとアッシュの剣がぶつかっていました。
全く同じ技。同じ動き。
利き手が違うために、まるで、鏡のようです。

アッシュを真正面から見たのでしょう、ルークの顔がまた青くなります。
しかし、今回は二回目です。
以前のように青い顔で震えているだけではありませんでした。

「今のは、ヴァン師匠の技だ!どうしてお前が使えるんだ…!」

狼狽を隠し切れない様子のルークに、アッシュの表情が歪みます。
憤怒。彼もまた、それを隠そうとすらしません。

「決まってるだろうが!同じ流派だからだよ、俺は、…!」
「アッシュ!!」

シンクがすたすたとアッシュへ歩み寄り、その肩を掴みます。
ラルゴも後に続き、イオンくんの傍に行きます。
かなり余裕そうで腹立ちますね。私、こんなに疲れているのに。

シンクの言葉で渋々アッシュは剣を懐に収めました。
ラルゴがそれを確認し、イオンくんをルーク達に見える位置へ移動させます。

「取引だ。導師は引き渡す、だからここでの戦いは打ち切りたい」
「…このままお前らをぶっ潰せば、そんな取引成り立たないな」

ガイの至極真っ当な反論を、シンクは嘲笑で片付けます。
自分たちごと生き埋めにしてもいいんだよ、と。
こちらは構わないとか適当なこと言わないで欲しいですね。
いえ、別に私はいいんですけど。
どうでも。

「そのまま外へ出ろ。戻ってきたら本当に生き埋めにするよ。
 …ああ、そうだ。ユノ、そいつら出口まで連れてってやりなよ」
「はぁ?」

何言ってるんでしょうか、こいつ。

「さっきの地震で地形が変わってるみたいなんだよね。念には念をってやつさ」
「嫌ですよ面倒臭い」
「送って行ったらそのまま帰っていいぞ」

アッシュの言葉です。やったぁ!やります!と叫ぶ私に、
露骨にドン引きしたルークたちの視線が突き刺さりました。
やったぁあああ!帰れる!この怒涛の激務から開放されるっ!

「あのような下賎な輩に命令されるとは、腹立たしいですわね」
喜ぶ私に目もくれず、苦々しく呟く金髪の女性。
それをなだめるティアは、彼女をナタリアと呼称しました。
…ナタリア。王女様ですか、なるほど。

「さあ、行きましょう。私の快眠と休養と子供の笑顔のために」
「……よく言うよ」

ナタリアに意味ありげな目線を向けるラルゴを無視し、踵を返します。
彼らの間、何か確執があったりするんですかね。
どうでもいいですけど。

それより、どうでもよくないものがあります。

「ユノ。折角ですし、少しお話しても良いですよね?」

光なんてほとんどないのに、眼鏡が光っています。
なんて恐ろしい。迅速に帰らせてください。

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