戦ってくれません


砂漠は嫌いです。
もう好きなところがないってくらい嫌いです。

確かバチカル付近に湿原もありましたよね。キムラスカ最悪です。
亡命するならマルクトですね。ありえませんけど。
でも、ちょっといいかな、程度には考えている私がいます。

「使える奴ってそういうことかよ!」

目の前のコパンを杖でぶっ飛ばして、絶叫。
ことかよ!の部分がだだっ広い空間に反響して消えていきます。
シンクが「何叫んでんの?崩れたらどうしてくれんの」と辛辣に言ってきますが
全く興味ありません、持つ余裕がありません。

タルタロスにはそれなりに兵士がいたのですが、
この遺跡ですることは彼らにはあまり知られたくないようで。
今いるのは私、アッシュ、シンク、イオンくんです。
ラルゴが奥で待っているそうですが、今は置いておきましょう。

誰も戦ってくれません。

以前のコーラル城と違い、神託の盾の手が全く入っていないこの砂漠。
魔物が多いのなんのって。気性も荒く、すぐ襲い掛かってきます。
なのに。誰も戦ってくれません。
ひどすぎます。

「ユノちゃん、大丈夫ですか?すみません、僕が戦えれば、」
「導師。私語は謹んで欲しいんだけど」

息を切らす私に駆け寄ってきたイオンくんの言葉を遮るシンク。
悪意が透けて見えます。どうでもいいですけど。
イオンくんはぐっと唇を噛んで、私を振り返りつつもアッシュに並びました。
くっそ、あのガキ!私を何だと思ってるんですか!

*

最深部には、言葉通りラルゴが待っていました。
ミックスグミを口に入れると、いつもより粘っこく感じて不快な気分になりました。
ここにくるまで、私どんだけ頑張ったんでしょう。
見向きもしないアッシュ、こちらを見ては鼻で笑うシンクに殺意が芽生えます。
だけど彼らに殴りかかったら返り討ちにされるのが関の山。
イオンくんに罪はありません。

じゃあ、八つ当たる相手はひとりしかいませんよね。

「というわけで、穴が開くまで殴らせてくださいお願いします」
「……大丈夫か?」

憐れまれました。
もう、死んでいいですかね?私。

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