黒い空


タルタロスの窓から見える景色は、凄まじくつまらないです。
あの後即行でここに帰ってきたものの、アッシュの姿は未だなく。

待っている時間を持て余している間、すごく腹が立ってきました。
ヴァンめ。
帰ってきたアッシュもだいぶ機嫌が悪かったようですが、
私の顔を見た瞬間に若干怒りが収まった様子でした。
うわぁ、って顔されました。失礼な奴です。

閑話休題。

現在はバチカルの裏あたりに向かって走行中です。
漆黒の翼がイオンくんを誘拐し、バチカル前にいるシンクに引渡し。
シンクとその部下がクルーザーでそこまでイオンくんを運んでくるそうです。
面倒臭いですね。どうやらタルタロスでの移動を悟られたくないようです。
…まあ、これ実質盗んだみたいなもんですしね。

「リーランド奏長、そろそろ到着します」

わざわざ呼びに来たらしい兵士に返事をして、ハッチへ向かいます。
窓の外は、雨雲で淀んだ黒い空が広がっていました。

*

階段の半ばほどから、見下ろします。
ルークの斬撃を受け止め、弾いたアッシュは全身が濡れて、
いつもは上げている前髪も目の下あたりまで下ろされた状態です。
常にああしていればいいと思うんですけどね。
だって前髪アップにしてたりしたら、その。額の毛根が死にそうですし。

どうやらルーク達は廃工場を通ってきたようです。
予測していたより行動が早いですね。みくびりすぎてました。

「アッシュ」

剣を弾かれ、座り込んだルークを見下ろすアッシュ。
ルークの顔色はここからでも分かるくらいに青く、アッシュの顔を、
というより目の前にある自分の顔を、絶望的な表情で凝視しています。
アッシュは私の声を意図的に無視した様子でした。
ええ、関係ありません。
ここでルークに会うのは予想外ですし、殺したらきっと叱られます。

「時間が押しています。早く乗ってください」

舌打ちが聞こえる、ような気がしました。そんな表情です。
アッシュが階段を登って来る時、ティアが私の名前を呼びました。
懇願するような、揺れた瞳が見えます。
…呆れます。まだ、私をあんな目で見れるんですか。彼女は。

興味ありませんけど。

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