満喫中


流石バチカル。食材屋の品揃えは完璧ですね。

闘技場の客も多いからか、屋台なんかも豊富です。
じゃがバター、でしたっけ。前回来た時に食べたら美味しかったんですよね。
現在闘技場は休業中ですが、屋台はあるでしょうか。
この後は、そうですね、コア店でも見に行きましょうか。
帝都、満喫中です。

え?お前何してるんだって?
嫌ですね。私がアッシュを探しに行くとでも思ったんですか?

ガキじゃないんです。放っておいても問題ないでしょう。
それに、ヴァンには会いたくありませんしね。

「あのさ、ちょっといいかい?」

闘技場前の集合店を出て、コア店の前まで歩いた時でした。
背後から声をかけられたので振り向きます。

「えっと…闘技場への道を、教えて欲しいんだけど。いいかな?」
「はあ。いいですよ」

燃えるような、という表現が正しいでしょう。
鮮やかな赤髪を高い位置で二つにまとめた彼女は、いかにも快活そうです。
道を尋ねるといっても、説明するほど遠くありませんけどね。

服装もあまり見かけないものですし、おのぼりさんでしょうか。

あっちで、あそこを曲がって、まっすぐ。
そんなレベルの道案内をすると、彼女は礼儀正しくまっすぐ頭を下げて、
足早に走り去ってしまいました。髪が尻尾のように靡いています。

…ふむ。
出鼻を挫かれた気分です。もしくは、毒気を抜かれた気分です。

アッシュを探すつもりはありませんし、タルタロスに戻っていましょうか。
そう思って踵を返すと、…ええ、立っていましたよ。
フードを目深に被り、足元までを外套で覆った長身の男性が。

あーあ。会いたくないって言ったのになあ。

「お説教なら、手短にお願いします」

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