SS部屋 | ナノ
静帝能力持ちパロT

2011/01/11 22:46

ピクシブには既に上げてるんだけど、能力持ちパロ
キャラが死んだり生き返ったりしてるので注意


 昔々、あるところに一つの王国がありました。
 その国はたった一人の王子が統治していました。彼には不思議な能力があり、誰にも彼には逆らえませんでした。ですが、その王子はとても心優しく、その優しさ故に騙されやすい性質でした。
 大臣に唆され、罪のない国を一つ滅ぼしてしまい、彼は罪悪感から世間から姿を消しました。王がいなくなった国は、その後、今までの繁栄が嘘のように衰え、廃れていったといいます。
 彼は一体どこへ行ったのか。その後、彼の姿を見る者はなかったといいます。

「…なんてね」
 少年──竜ヶ峰帝人はくすっと笑い、近くにあった石を蹴った。
 高校の制服を纏いながら、彼は幼いながらも含みのある笑みを浮かべる。幼い容貌とのギャップが激しかった。
 帝人は今は亡き国の元王子だった少年。といっても魂が、だが。身体はとうの昔に衰え、今の姿は生まれ変わって数十回目だ。
 まるで中二病のような設定だと笑うかもしれない。笑われても構わない。だが、馬鹿にされるのも気にくわない性分なので、今まで誰にも話したことはない。
 今、この時代に竜ヶ峰帝人として生まれてくる前は、何処かの金持ちの家に生まれ、病で10になる前に亡くなった。その前は貧乏で、身体を売らないと生活出来なかった。
 だが、おかげで様々な知識が帝人の脳内にはある。前世の記憶を引き続き継ぐことが出来るのも、帝人の持つ特殊な力によるものだ。
 帝人自身、自分の力についてよくわかっていない。たまに未来の情景が見えたり、前世から記憶を引き継げたり。そして、他人の思考に干渉することができる。則ち、相手を操り人形として使うことができる。もっとも、この力はかつて一国の王だった時代に使ったきりだったが。
 帝人は今は無色のカラーギャング、ダラーズの創始者だ。体力はないが、長年培った知恵で頭には自信がある。
「帝人ー!」
「正臣、園原さん」
 名を呼ばれ振り返れば、髪を茶色に染めた少年が走ってくる。
 彼は紀田正臣。帝人が王だった時代に、王宮にて働いていた。帝人にも容赦なくタメ口を使い、よく大臣に怒られていた。
 そしてその後をついて来るのが園原杏里。
 過去は隣国の王女だった。帝人が姿を消さなければ彼女と婚約することになっていた相手だ。
 正臣と杏里に過去の記憶はない。帝人が異質なだけだ。
 帝人はそれについて寂しく思ったりしたことはない。今こうして彼等とまた会えたことが嬉しい。
 今までの帝人の前世は早く死ぬことが多く、彼等とは中々巡り会えなかった。これまで帝人は二十歳まで生きたことがない。王として君臨していたとき、伝書には心を痛んで姿を消したと残されていたが、本当は違う。帝人に一つの国を滅ぼさせた大臣に背後から刺されて殺された。他の人生の死因は病だったり、事故だったりだ。
──一体何度、人生を繰り返せばいいんだろう。
 それは神のみが知るのだろう。能力があるとはいえ、帝人もただの人間だ。
 正臣と杏里と別れ、町を一人歩く。隣の通りから聞こえる怒声に、帝人は自然とそちらへと足を向けた。
「…やっぱり」
「待てェ!ノミ蟲が!!」
「ははっ、やーだよ」
 金髪のバーテン服を着た青年は平和島静雄。彼もかつては王宮に兵士として遣えていた。当時は短気で喧嘩っ早い普通の人間だった。だが、今世では尋常ではない力を手に入れてしまったらしい。自販機を軽々と持ち上げ、黒い男に投げ付ける。
 黒を基調とした男は折原臨也。かつて大臣として遣え、帝人に一つの国を滅ぼさせ、殺した張本人だ。あまり関わりたくないのだが、向こうから構ってくるので帝人自身、嫌な顔をすることくらいしかできない。
 勿論この二人にも当時の記憶はないようだが。
 臨也に逃げられた静雄は、ぜーはーと肩で息をし、怒りを鎮めようと勤しむ。帝人が近づくと、静雄は気付いたらしく、顔をほんわりと緩めさせた。
 彼は前世でも帝人に優しかった。勿論今もだ。
「よお、竜ヶ峰」
「こんにちは、静雄さん」
 砂埃のついた手を払い、帝人の頭を優しく撫でる。心地良いそれは確かに昔感じたモノで、懐かしみと共に心に落ち着きがあらわれる。
「学校帰りか?」
「はい。静雄さんはお仕事は…?」
「夜まで待機だ。今取り立ててる奴が夜中にしか現れねえんだ」
 怒りが大きな掌から伝わってくる。決して力を入れられることはないが、思わず身震いしてしまうのは仕方がないと思う。
「あの、じゃあ夕食一緒にどうですか?」
「いいぜ。何が食べたい?」
「焼鳥!…ぁ」
「ははっ。そうか、竜ヶ峰は焼鳥が食べたいんだな」
 子供のように声を大きくしてしまったのが恥ずかしい。帝人はまだ高校生だが、中身は違う。何百年も生きているのだ。だが、静雄の前だと何故か子供に戻ってしまう。これも昔、早くに親を亡くしたせいで家臣達に可愛がられていたせいか。静雄はその中でも帝人をよく可愛がった。それは生まれ変わった今でも変わらないらしく、弟のように可愛がってくれる。
 ちょっとだけ、とじゃれるように頬を擦り寄せれば、静雄は優しく笑った。
 夕食を共にし、これから仕事だという静雄に別れを告げた。送って行くという静雄の申し出を申し訳ないので断る。無事家にたどり着き、早速パソコンの電源をつける。迷う事なくダラーズの掲示板を覗く。
「今日も異常なし…」
 粗方の記事を読んだ後、今度はいつも通っているチャットルームを開く。そこには既にチャット仲間であるセットンと甘楽がいた。


田中太郎さんが入室されました
田中太郎【こんばんは】
セットン【太郎さん、ばんわー】
甘楽【あっ、太郎さん!ちょっと聞いてくださいよお】
田中太郎【どうしました?】
甘楽【平和島静雄っているじゃないですか。あの人、ショタコンらしいですよ!】
田中太郎【は?】
セットン【いや、最近なんだか小さな少年とよく一緒にいるらしくて。でもそれだけですよ】
甘楽【そんなのわからないじゃないですか!いい食い物にされてるかも…】
田中太郎【静雄さんはそんな人じゃないと思います】
甘楽【もう、太郎さんは優しいんだから】
 小さな少年というのはおそらく帝人のことだ。『小さな』とは失礼な、と眉間に皺を寄せる。
 自分はまだまだ伸びる、と言い聞かせ、話題の変わったチャットにまた飛び込んで行った。


 気付けば日付が変わっており、退室の挨拶をした後欠伸をし、押し入れから布団を出す。アラームを設定し、布団にくるまった。暗闇で瞳を閉じれば眠気が襲ってき、流されるままに夢の世界へと旅立った。


「もひもひ…」
 しゃこしゃこと歯ブラシで歯を磨きながらかかってきた電話に出る。表示されていた名前が『紀田正臣』だったので歯ブラシを銜えたままだ。
「どひたの?」
『…お前絶対歯ブラシ銜えてんだろ』
「うん。あ、今吐き出すから待って」
 口を濯ぎ、口の周りを水で洗い流してから再度携帯をとる。
「で、何?」
『俺、今日風邪ひいたから休むな』
「そうなの?じゃあ帰りに寄るよ」
『授業中とかメール送りまくるからな!』
「病人なんだから大人しく寝なよ…」
 喋ったから疲れたのか咳をすると、正臣は『もう寝る』と電話を切った。正臣も風邪をひくんだなあ、とどこか失礼なことを考えた。


「…高校に入って正臣がいないのって久しぶりだな」
 そう呟いたのは帰路にて。隣には一緒にお見舞いに行くと言った杏里。
 杏里は「そうですね」と苦笑する。最近は三人でよく屋上で食べていたので、五月蝿い人間が一人いないだけでやけに静かに感じた。
 正臣の家のインターホンを押すと、すぐに扉が開いた。そこには額に冷えピタを貼った正臣。
「いやいや、待ってたよ少年少女よ!」
「元気そうだね」
「朝はちょっと寝込んでたけど、昼から大分マシになったんだ」
 杏里がお見舞いのシュークリームを渡せば、正臣は嬉しそうに笑った。
 結局、正臣ははしゃぎ過ぎて熱を振り返し、帝人と杏里は苦笑しながら家を出た。もしかしたら明日も休みかもしれないとお互いが考えていただろう。
 途中で道が分かれ、そこでさよならをする。暗いから送っていこうかと申し出たが断られた。昨日の静雄さんもこんな感じだったのかと考えながら帰路につく。
 アパートに着けば、扉の前には煙草をふかした静雄が立っており、帝人は慌てて近づく。
「静雄さん!」
「おう、竜ヶ峰」
 彼のいる理由を考えてみるが、検討もつかない。静雄はいつも通りに帝人の頭を撫でる。
「あの、どうしたんですか?」
「いや、今日は早く終わったから晩飯でも一緒にどうかと…」
「いいんですか?」
「お前さえ良ければだが」
 帝人の家は狭いので静雄の家に行くこととなった。男一人暮らしのためか、あまりモノがない。静雄らしいといえばその通りなのだが。
 肉がたっぷり入った炒め物や少し塩辛い黄金色のスープが出される。炒め物の方はこれでもかというほど皿に盛られていて、帝人は苦笑を零す。
「いっぱい食えよ」
「はい」
 大雑把な野菜の切り方は昔と変わっていない。ピーマンは苦手なのか、入っていなかった。
 食後のデザートは大きくて甘いカスタードプリン。冷蔵庫にはまだまだそれが入っていた。帝人は一個食べたが、静雄は四個食べた。
「竜ヶ峰は明日も学校だよな」
「はい、そうです」
「そうか…。またこうやって一緒に食べような。次はお前が作ったのが食べたい」
「喜んで」
 くすくすと笑いながら静雄に家まで見送られる。最初は断ったのだが、今度は拒否できなかった。
「じゃあな」
「また」
 狭いアパートに戻ると、寂しい気持ちが溢れ出した。こういうのは一人になるとたまに起こる。帝人は何も考えずに布団に潜った。
 帝人は死ぬときはいつも一人だった。敢えて言うなら自分を殺した人間が傍にいるくらい。だからか知らないが一人がとても恐ろしく感じた。
 そういう時は何も考えず、眠ればいい。眠れない時は出来るだけ、幸せな記憶を思い出す。そうすれば、ゆったりと眠れた。
 だが、その眠りは奇妙な窓の音によって起こされることとなった。


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コメント
2011/01/11 23:03 月詠

すごく面白い設定だと思います(^ω^ )
続きが気になります!

センター、そろそろですね。頑張ってください!

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