静帝で帝人がわんこ
2010/12/24 19:36
帝人はわんこかにゃんこかうさぎかハムスターがいい
「くぅん」
「…あ?」
「だから、これ帝人君」
突然新羅に呼び出され、静雄は渋々と家へと向かった。
そんな時間があれば帝人に会いたかったのだが、緊急事態だなんて言うから、静雄は眉間を寄せながらインターホンを押した。
そして、突然渡されたのが黒い柴犬。まだ仔犬のようで小さく、人懐っこいのか静雄に尻尾を振っている。
「なんだこれは」と尋ねれば、世間話をするかのように「ああ、帝人君だよ」と微笑んだ。
「裏ルートで手に入れた薬を五万で実験させてもらったんだ。まあ明日には戻るよ」
帝人の服を袋に入れ渡される。帝人らしい犬は静雄の足元でおすわりをしている。静雄は元々犬が好きだ。だが、これは帝人だと言われればもっとかわいく見えてしまう。
耐え切れずに頭を撫でれば、ぱたぱたと小さな尻尾を振った。
「静雄の家に連れて帰ってね。帝人君を一時とはいえ犬にしただなんてセルティに知れたらビンタじゃ済まないからね」
「…お前なあ」
呆れたような声を出せば、帝人は静雄の脚にちょん、と小さな肉球を押し付けた。首を傾げる帝人に悶えそうになるのを堪える。
「…仕方ねえな、今日だけだぞ」
「やっぱり帝人君が可愛いんだね。帝人君が犬でまともに抵抗出来ないからって悪戯しちゃだめだよ」
「殺すぞ」
新羅は「冗談だよ」と笑っていたが、静雄は睨み続ける。だが、帝人を抱き上げた際、甘えるように鼻を鳴らし、肩に顎を置いた帝人にすべてを赦してしまった。
壊さないように抱きながらアパートへと向かう。帝人はその間も尻尾を振っていた。
玄関で降ろすと、帝人はいつものようにローテーブルの前で座った。ああやっぱり帝人なんだなとぼんやりと思う。
抱き上げ、ソファへと乗せる。静雄はそのソファにもたれ掛かるように座り、帝人に目を合わせる。
「…それにしても和犬か。帝人らしいな」
くしゃくしゃと撫でてやれば、気持ちよさそうに目を細める。手の平を舐められ、慌てて手を離した。帝人も無意識だったのか、目を丸くしている。
「…飯にするか」
気まずい空気をどうにかするために、静雄は立ち上がる。ドッグフード等はないが、犬の食べていけないものを調べ、野菜を煮てスープを作ってやった。
静雄は自分のを他の鍋に移し、そちらは塩胡椒で味付けをする。熱いと可哀相なので、皿に移し、テーブルに移動すると団扇で風を送り冷ます。
帝人はその間、静雄にもたれ掛かるようにして眠っていた。猫のように丸くなっており、思わず口元に笑みが浮かぶ。
「帝人、もうそろそろ食べれるぞ」
頭を一撫ですれば、ぴくりと耳を動かし、頭を上げた。
「ほら、食べろ」
すりすりと鼻先を静雄に押し当て、スープを舌で舐める。食べづらそうなのはスプーンで口にいれてやる。
「うまいか?」
ぺろりと口の周りを舐める帝人に、そうかと微笑み静雄も自分のスープを食べる。
帝人は先に食べ終わり、ソファの上に乗り、再度丸くなった。暫くすると寝息が聞こえてくる。
くすりと笑い、トイレへ行くために帝人を起こさないようそっと立ち上がった。
用をたしていると、扉の向こうから遠吠えのような仔犬の少し高い鳴き声が聞こえてくる。静雄が慌ててトイレから出れば、帝人は静雄の元へ走ってくる。尻尾ははち切れんばかりに回転している。
「ああ、一人にして悪かったな。寂しかったのか?」
抱き上げると、帝人はくんくんと静雄の首筋を匂う。暫くすると安心したのか、くてんと力を抜いた。
ああ可愛いと静雄は口元を緩める。頭を撫でれば「くうん」と鳴いた。
寝る際は帝人をベッドに乗せ、寄り添うように寝た。布団の中は暑かったらしく、途中で布団の上に移動したようで夜中にそわそわと動いていた。
「……ぁ」
朝目が覚めれば、帝人が全裸で布団越しに静雄の上に乗って眠っていた。静雄は急いで眠ったままの帝人の身体を布団で包んだ。帝人はうとうととしながら静雄の名を呼ぶ。
「どうしたんですか…?」
「お前ッ、裸!」
「え?…あっ」
帝人は顔を真っ赤にし、布団で身体を隠す。静雄はとにかく昨日新羅から預かった帝人の服を渡した。
帝人が着替えている間、後ろを向いた。よくよく考えれば、昨日帝人を抱きしめている間も帝人は裸だったのだ。今更ながらに恥ずかしくなる。
「…おい、帝人」
「はっはい」
「これからは新羅にいくら渡されようが簡単に身体を実験台にさせんじゃねえぞ」
「…ぅ、はい」
せっかくいいバイトだったのになあ、と残念そうな表情をしていれば、不意に静雄が振り返る。帝人は慌てて自分の表情を取り繕った。
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