SS部屋 | ナノ
臨帝で学パロ4

2010/12/02 17:52

 臨也はあれから何度か帝人の家に脚を運ぶようになった。
 ちょっとした手土産(主に食べ物)を持って行くと、遠慮しながらも嬉しそうに笑った。その笑顔が見たくて何度も訪れてしまう。
 今日も屋台で買った味噌だれ焼鳥を片手に帝人の家へと向かう。休みだからいないかもしれないが、それなら家の前でずっと待っているだけだ。
 コンコン、と扉をノックすると、いつものように扉が開く。
「帝人く─…」
 出てきたのは帝人ではなく、絵に描いたような美女だった。
 臨也は思わず部屋を間違えたのかと思ったが、こんな小さなアパートで間違えるはずがない。
「…君、誰?帝人君の何か?」
「貴方こそ誰なんですか?」
 気の弱そうな外見とは裏腹に、目には強い意志が篭っている。
──…まさか、帝人君の彼女とかじゃないだろうな。いや、それにしてはそんな素振りは見せなかったし…。
 睨み合っている間に、当の本人が現れた。
「あれ、臨也君。こんにちは」
「帝人君!」
「あれ、杏里も来てたんだ」
──呼び捨て!?
 帝人が他人を呼び捨てにしているのを見たのがこれが初めてだ。臨也の中で嫌な予感がむくむくと広がっていく。
「帝人君、この女、誰?」
「え?ああ、この人は僕の双子の姉の杏里。杏里、この子が前電話で話した臨也君」
「…こんにちは」
「…どうも」
「似てないでしょ」と笑う帝人に、臨也は息を一つ吐く。
 言われてみれば、雰囲気が少し似ているような気もする。
「さっき買い物行ってたんだ。何か出すから臨也君も上がって」
「…私、帰る」
「え?ああ、うん。じゃあまた」
 杏里は臨也をちらりと見ると、大きな瞳をスッと細めた。どうやら臨也同様、互いにいい感情を持ち合わせていないようだ。
──だってあの目、明らかに肉親を見る目じゃない。
 帝人はよくわかっていないらしく、首を傾げる。
「臨也君?どうかした?」
「ううん。あ、そうだ。帝人君に焼鳥買ってきたんだ」
「わ。いつもごめんね」
「俺も食べたいからそのついでだよ」
──食べる物を共有できるだなんて、それほど嬉しいことはないじゃないか。
 決して純粋ではない考えで、臨也は無邪気に微笑む。
「さっきの人ってどうやって帝人君の家にいたの?」
「ああ、たぶん合鍵だと思うよ。実家に一つ置いてあるんだ」
「ふーん」
──…羨ましい。
 それがあれば、いつだって帝人の元へ訪れることができる。じっと帝人を見ていれば、帝人はまた首を傾げる。
「?臨也君も合鍵欲しいの?」
「えっ」
「いや、いらないなら別にいいけど」
「欲しい!…けどいいの?」
「僕の家、碌な物置いてないから取るものもないし。臨也君なら別にいいよ。よく来てくれるしね」
 怪獣のキーホルダーがついた鍵を手渡される。臨也は嬉しさ故に手から力が抜け、焼鳥の入った袋を床に落としてしまう。帝人は慌ててそれを拾い上げた。
「臨也君?どうしたの?大丈夫?」
「…うん、帝人君大好き」
「鍵くらいで大袈裟だなあ」
 臨也からしたら『鍵くらい』ではない。
──帝人君は俺のことを子供扱いしてる。俺よりちびのくせに。
 どうやったら同等に見てもらえるのだろう、と考えながら皿に開けられた焼鳥を一本銜えた。


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