静帝で腐男子なみーくんW
2010/12/01 17:12
いつものバーテン服で行くのもなんなので、久しぶりに数少ない私服を着る。
出迎えてくれた帝人は、少し目を丸くしていた。
「…んだよ」
「いや、静雄さんの私服初めて見たなあって。スタイルいいから何着ても格好いいですね」
格好いいという科白に、胸がきゅんと鳴る。嬉しい、今なら心臓が止まってもおかしくないとすら思う。
「これ、サンキュ」
「いえいえ。あ、ちょっと待ってください」
封筒を押し入れの中へと仕舞い、いつものショルダーバッグをとる。
「お待たせしました」
「ん」
駅に向かい、そこから秋葉原へと向かう。行き道で、帝人は疑問になっていたことを聞いてみる。
「そういえば、この前どうして秋葉原にいたんですか?」
「幽のやつがなんか来るらしくてよ。暇だったから見に行っただけだ」
「かすか?」
「ああ、弟だ」
「へえ、弟さんいるんですね。また今度、よかったら紹介してください」
「お、おう」
その時には恋人として紹介出来るようになったらいいのに、と思いながら、首を縦に振った。
前と同じ店へと向かい、新刊をチェックする帝人の後で待機する。
「うーん、新しいのないみたいです」
「あっちのは?」
「あ…あれは…」
かあっと顔を真っ赤にさせる帝人に首を傾げる。
「ん?」
「…18禁のコーナーですから、僕は買えないんです」
「…俺が買ってやろうか?」
「ッいいんですか?」
帝人はどこか興奮した面持ちになる。帝人は静雄の横につきながら、「アレとアレが欲しいです」と指をさした。
「これか?」
「あ、はい」
財布を取り出そうとする帝人の横を通り過ぎ、レジへと向かう。帝人は慌てていたが、レジまで行く訳にもいかない。戻ってきた静雄にお金を渡すが、静雄は受け取らなかった。
「いい。これくらい奢る」
「で…でも、」
「いいんだよ。これは俺が読みたくて買った本なんだから」
「あぅ…」
帝人は諦めたのか、「ありがとうございます…」と呟く。
「あの、違う店も回っていいですか?」
「ああ」
帝人の後ろを忠犬のようについて回る。
バーテン服を着ていないからか、何度か逆ナンされた。帝人は苦笑を浮かべていた。
「静雄さん、元が格好いいですよね。手足だって長いし、なんだかモデルみたいです」
真っ直ぐな瞳で褒められ、柄にもなく照れる。静雄も何か褒め返そうと言葉を必死に捜す。
「ほら、竜ヶ峰も可愛いじゃねえか」
「それ褒め言葉じゃないですよ…もうっ」
拗ねたのか、顔をふいっと背ける姿に、静雄は叫びそうになるのを堪えた。
──なんだコイツッ、可愛い、可愛い!
心の中で叫びながら、ちらりと帝人を見る。帝人も静雄を見ていたらしく、ぴったり目が合った。
「…どうした?」
「その、静雄さんってやっぱりかっこいいなあって」
「…ッ」
何かを言いかけて口を閉じ、再度口をぱくぱくと動かす帝人に、静雄は期待半分で自分より頭一つ分が下にある帝人の顔を覗き込む。
帝人は意を決したように、口を開いた。
「あのっ、静雄さんはコスプレに興味はありますかっ?」
「…は?」
静雄は帝人の言葉に首を少しだけ傾げる。
──コスプレって…あれだよな。漫画とかのキャラの格好するやつだよな…。
「その、静雄さんって脚長いし、格好いいし、きっと似合うと思うんです!」
帝人の真剣に見上げてくる姿と、褒め言葉につい承諾してしまった。してからしまったと思う。
帝人からの頼み事は断れないのだ。惚れた弱みというやつだろう。
「本当ですか?楽しみにしててくださいね!あ、後で時間があったら採寸させてください」
「おう…」
──…ああ、くそ、可愛い。俺は竜ヶ峰に何されようが許せるような気がする。
例え帝人に殺されようが、甘受してしまいそうな自分がいて、静雄は首をぶんぶんと振った。
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コメント
2010/12/02 07:10 誓
帝人君に落ちっぱなしの静雄さんがナイス展開です。もうコスプレで告っちゃえよ、とツッコミしておきました。
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