SS部屋 | ナノ
静帝で腐男子なみーくん

2010/11/27 19:26

 キョロキョロと顔見知りがいないかを確認して店へと入る。店内でも気を抜くことはない。
「あった…!」
 帝人が幼い顔を綻ばせながら手を伸ばしたのは通常のそれより薄い本。普通の本屋では売ってないモノだ。
──よかった、あのサークルさん人気だから無くなってたらどうしようかと思った。
 帝人が買ったのは、所謂同人誌というモノだ。
 元来、興味なんてこれっぽっちもなかったのだが、狩沢に無理矢理貸され、しょうがなく読んだのだが、何故だかはまってしまった。
 知り合いにばれては恥ずかしいのでこうやってこっそりと、お金を節約した分を回して秋葉原へと買いに来ている。勿論、狩沢や遊馬崎にも話していない。
 鼻歌を口ずさみそうになるような気分で店を出ると、帝人の身体は固まった。目の前を通り過ぎようとしていた人物は、帝人の姿に気づくと、一瞬店の名前をちらりと見、目をまるくして再度帝人へと視線を戻す。
「竜ヶ峰…?」
「静雄さん…」
 帝人の顔から血の気が抜ける。先程までの幸せな気持ちはどこへ行ったのやら。
 帝人自身、こんなところで静雄と会うとは思っていなかった。いくら静雄でも、この本屋がただの本屋でないことはわかっている。
「…おつかいか?」
「えっ」
「だから、狩沢とかに頼まれたのか?」
「え、えと…」
 静雄の行き着いた先は、やはり帝人と同人誌は結び付かないらしい。勝手に勘違いしてくれたので、帝人は有り難く首を縦に振ろうとしたが、横目でその当人達の姿が見え、思わず静雄の腕を引いて横の路地裏へと入る。
「今日は新刊がたっくさん入荷してるはず!うふふ…買い漁るわよ」
「終わったら例のメイド喫茶前に集合っすね」
 狩沢と遊馬崎は先程まで帝人のいた店に意気込んで入って行く。姿が消えると、帝人は息を吐いた。
「…もしかして、この本は竜ヶ峰のなのか?」
「あっ」
 帝人の手の中にあったはずの紙袋が何故か静雄の元にある。袋から本を出した静雄に、帝人は顔を真っ赤にする。
 表紙からBLの本だということがわかる。帝人は泣きそうに目を潤ませた。
「なッ、どうした?!」
「誰にも言わないでください、お願いします!」
 両手で静雄の掌を包み込む。自然と上目使いになり、静雄は顔を真っ赤にさせる。
「静雄さん…?」
「いっいや、わかった。わかったから離せ」
「す…すみません」
──…やっぱり、気持ち悪いよね。
 そう思い、帝人は目を伏せたが静雄はそれどころではなかった。普段から外で働いているので日に焼けた肌を尚更赤くし、右腕で顔の半分を隠し、左手にある本を帝人に返す。
 静雄がこういう反応を返すのにはには理由がある。静雄は帝人のことが好きなのだ。男同士ということで諦めていたのだが、もしかして自分にも希望はあるかもしれないと一筋の光が見える。
「…あのよ、竜ヶ峰は同姓愛には偏見がないのか?」
「え?はい、まあ…。僕自身から関わるのならまた別ですけど。偏見はないです」
「別って…」
「二次元でのこういうのは好きなんですけど、現実となると…」
「そ、そうか…」
 差し込んだ光は呆気なく雲によって覆い隠されてしまった。
──…人生って、やっぱ甘くないよな。
「その、静雄さんは僕がこういうの買ってるって知って、気持ち悪いとか思いませんでしたか?」
「思わねえよ、好みは人それぞれだろ?」
「よかった…」
 帝人はホッと胸を撫で下ろす。そんな表情をされると期待してしまう。
 じゃあ、と帰ろうとする帝人に、なんとか引き止めようと思わず帝人の肩を掴んでしまった。
「静雄さん?」
「あっ、い、いや。…その、それって面白いのか?」
 静雄が指を指したのは帝人の腕の中にある同人誌。
「ッ興味あるんですか?」
「い、いや…ああ」
 目を輝かせる帝人に、静雄は思わず頷いてしまった。
──なんで俺は…!でもこんな表情してる竜ヶ峰に否定なんかできねえし。
「あの、よかったらこれから僕の家に来ませんか?」
 帝人の言葉に、静雄は卒倒しそうになった。


特に終わりはありませんが、ちょくちょく続きます


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コメント
2010/11/28 18:17 くまのポーさん
つっづき♪つっづっき♪
お願いします♪
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2010/11/28 02:38 つっき
腐男子帝人くんだいすきです!
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