SS部屋 | ナノ
ロボ静帝

2010/11/18 15:30

静帝で帝人→人間、静雄&臨也→ロボットパロ
途中で飽きたので途中まで
続きはないよ!


「…ミカド、早く帰ってこねえかな」
 青年の姿を模したアンドロイドは一人呟いた。広い屋敷に独りぼっち。
 ただ一人を思い浮かべて彼は待ち続けたが、待ち人は何年、何十年経っても帰ってきません。
「…ミカド」
 彼は人工知能のせいで寂しさを感じ、眠って待つことにしました。

───…そして、再び数百年が経ちました。

「正臣…、本当に行くの?」
「当然だろ、何のために臨也さんの目を盗んで此処の鍵をかっぱらってきたと思ってんだよ」
「後で怒られても正臣が責任とってよね」
「此処まで来てそりゃねえだろ。同罪同罪」
「最低だ」
「親友を見捨てようとしてる帝人も十分最低だぞ」
 茶髪の少年は黒髪の少年の頭にチョップを喰らわせる。
「痛いよ」とじゃれあいながら、古びた洋館の扉の前に巻き付けられた真新しい鍵を開ける。
 今にも崩れ落ちそうな洋館は、扉を開けると砂埃が大量に落ちてきた。
 帝人は咄嗟に避けたが、扉を開けた正臣はもろに被ったようで、髪が灰色に染まっていた。
「あはは」
「笑うな!一人だけ避けやがって」
 文句を言う正臣の背中を押し、屋敷内へと入る。なんだかんだ言って帝人もドキドキしている。
「床…すぐ抜けそう…」
「気をつけろよ」
「正臣こそ」
 持ってきた懐中電灯で光のない屋敷内を照らす。帝人はなんとも言えない違和感を覚えた。
「ん、どしたよ帝人」
「…いや、何にもない」
「ビビってんのかあ?帝人は怖がりだな」
 からかっているような口ぶりに、帝人はぷうと頬を膨らませた。
「此処、寝室か?」
「本当だ、ベッドみたい」
 蜘蛛の巣が張り巡らされているが、ライトをあてればすぐにわかった。
 次の部屋に行こうとする正臣の後を追おうとしてあるモノに気付く。
「なにこれ…」
 埃が溜まっていてよく見えない。手で埃を拭えば、冷たいが柔らかい肌の感触がし、帝人は奇声をあげた。
「どうしたッ?!」
「ひ…人がッ」
「…なんだ、人形じゃんよ」
「…え?」
 確かによく触ってみれば、柔らかな肌の感触の奥に硬い金属のようなモノがある。
「びっくりした…」
「確かに、本物の人みたいだよな。昔のここの主人の人形だったのか?つーか等身大の男の人形って…」
 苦笑を浮かべる正臣に、帝人も立ち上がる。次の部屋に向かおうとすれば、腕を何かに掴まれた。
「え…」
「ミ…カド……」
 今度こそ帝人は絶叫した。今まで動かなかった人形が喋ってあろうことか自分の腕を握っている。
「…ッ」
 唇を埃っぽいそれに塞がれる。初めは冷たかった感触が段々熱を持ってくる。
「帝人、次は一体何─…」
 正臣も固まった。親友が人形にキスしている。否、されている。
 人形だったソレは帝人から唇を離すと、愛しそうに抱きしめた。
「ミカド…会いたかった。お前のこと、ずっと待ってた」
「だ…れですか!僕は貴方のことなんて知りません!」
 帝人がそう言えば、ソレは悲しそうに眉を下げる。
「俺のこと忘れたのか…?」
 力の抜けた隙に、帝人は拘束から逃れ、正臣の後ろに隠れる。
 その瞬後、場にそぐわない愉快そうな声が響いた。
「悪い子だな、正臣君。勝手に鍵取っちゃうだなんてさ。帝人君も確かに俺は君んちの使用人だけど、あんまりお痛が過ぎるとお仕置きしちゃうよ?」
「…ッ臨也!?」
 現れたのはスーツを着た黒髪の青年。にこにことした笑みを浮かべている。
 彼に一番に反応したのは帝人でも正臣でもなく、金髪の人形だった彼だった。
「やあ、シズちゃん。起きちゃったんだ。これだから帝人君を此処に近づけなかったのに」
「お知り合いですか…?」
「うん、彼と俺は同じ所で生まれたんだ」
「で…でも、この人はさっき人形だったのに…」
「ああ、俺も彼もアンドロイドだからね。気付かなかった?」
「…ええっ?!」
 臨也は心底楽しそうに、だが静雄にはどこか嫌悪を混じりながら話す。
「手前、ミカドに近づくんじゃねえ!」
「はあ?この子は君の知ってる彼じゃない」
「何言っ─…」
 静雄が反論する前に、臨也は帝人の着ていたシャツの釦を外す。帝人は慌てて止めようとしたが、二つ外されたところで臨也の手は止まった。
「ほら、黒子ないでしょ?」
「…ッ!」
「それに、あれからもう数百年も経つんだよ。君の人間であるミカド君が生きているはずない」
「な…に…」
 静雄の動きが不意に止まる。それとともにかくんと倒れた。
「いきなり動いたからショートしたかな。あはは、ざまあ」
「だ…大丈夫ですか?」
「帝人君、放っておいていいよ。それは危険なんだ」
「……」
 動こうとしない帝人を臨也が抱き上げる。脚をバタバタとさせると、臨也はぺちんと帝人の背中を叩いた。
「…ん、正臣君逃げちゃったね」
「えっ」
「というのは冗談で俺が制裁を加えておいた」
 臨也が指を刺した後を見れば、正臣が階段の下で目を回していた。
「帝人君にもお仕置きって言いたいところだけど、俺が機械だってこと黙ってくれたら許してあげる。あと、二度と此処には近づかないこと」
「どうして…ッ」
「アイツは失敗作なんだよ。自分で自分の力の制御ができない。なのにミカド君は…」
「え?」
「いや、何にもない。とにかくアイツは危ないんだ。わかったね」
 帝人はそれに返事はしなかった。臨也はそれを肯定だと受け取り、気絶している正臣を俵抱きにし、此処からそう遠くない帝人の屋敷まで運んだ。
 帝人の家は古くからの名家だ。最近は権力も小さくなっており、帝人という名前はそんな今の現状を変えて欲しいという願いをこめて付けられたらしいが、当の本人は名前にそぐわない人格に育ってしまった。
 運動神経はないが頭がよく、当主としては差し支えないのだが、性格が甘すぎる。頼まれたら断れないという性分だ。
 両親も帝人の性格は理解しており、自由にさせてもらっている。
 爆睡している正臣を自らのベッドに寝かせ、こっそりと屋敷を抜け出した。
 向かう先は先程の古びた洋館だ。鍵は何重にも重なっており、簡単には開かないだろう。
 帝人は仕方なく、ひび割れた窓から入った。頬が切れたが気にしない。
 自分でもどうしてこんなことをしているのかわからない。自分にもこんな行動的な面があったのだと帝人自身も驚いている。
 だが、どうしてもあの金髪の彼が気になるのだ。あの愛しそうに表情が、あの目が頭から離れない。
「確か、こっちの方に…」
 先程訪れたはずの部屋に行けば、静雄が同じ状態のまま倒れていた。帝人はそれに近寄り、身体を起こす。
「ミ…カド…?」
「あの、大丈夫ですか?」
「……ああ、お前はミカドじゃなかったんだよな。…さっきはいきなり変なことして悪い」
 動きは固いが、どうにか起き上がる。静雄はふらふらとした足取りで、部屋を出ようとする。
「何処へ…?」
「何処ってミカドを待つんだよ。俺にはそれ以外することはねえからな」
「でも…」
 臨也は『ミカド』は死んだといっていた。この屋敷に住んでいたというのだから、亡くなっているのは確かだろう。
「あの、せめてシャワーを浴びませんか?埃まみれだと、その『ミカド』っていう人も戸惑うと思います」
「そうか…?」
「は、はい!」
「そうか」
 よくわからないが納得してくれたらしく、頭を撫でられる。心地よい手つきに臨也の言うことは嘘なのではないかと感じる。
「…それにしても似てるな」
「?」
「ミカドに、だ」
「それって誰なんですか?」
「俺とあのノミ蟲を作ったやつだ」
 何百年前からこんな技術を持っていたのだ、余程の天才だったのだろう。
「俺は静雄だ。お前は?」
「竜ヶ峰帝人です」
「…お前もミカドっていうのか」
 頭を撫でていた手が頬まで落ちる。埃っぽくて思わずくしゃみをすれば、静雄は慌てる。
「寒かったのか?身体暖めねえと」
「え、いえ、あの」
 帝人の腕を引き、どこかへ向かう。帝人は別に大して寒くはなかったのだが、静雄の行き先が気になって黙る。
 連れていかれた先は昔の浴室のようだったが、さすがにもう水は通っていないらしく、静雄は舌打ちをした。
「…あ、の」
「あ?」
「シャワーでしたら、僕の家にきませんか?」
「…いいのか?つーかそこに臨也の野郎がいるんじゃ…」
「え?まあ、はい、います」
「…行く。連れてけ」
 優しげだった目が鋭く吊り上がる。臨也と仲がよくないということは肌で感じられた。

「…ねえ、帝人君。どういうこと?」
「えと…」
 シャワーを浴びさせた後、埃まみれのバーテン服は洗濯に出した。大きめのサイズの服を貸したのだが、静雄には短いらしい。
 堂々とし過ぎたせいで臨也にばれた。
「…まあいいよ、ちょっとシズちゃん貸してもらえる?『ミカド』君について話したいことがあるんだ」
 帝人はニュアンスで自分の名前ではないということがわかった。静雄はがたっと椅子を揺らしながら立ち上がる。
 帝人は小さく首を縦に振った。
「シズちゃんはずっとミカド君のこと待ってたんだよね」
「…ああ」
「実はミカド君はあの後、行方不明になったまま見つかってないんだ。死体もね。あの子はあまり外に出なかったからね。ノイローゼになって自殺でもしたんじゃないかって話になって捜索は打ち切り」
「あいつがそんなことをする訳ない!」
「わかってるよ」
 声を荒げる静雄に、臨也はそれと真逆の冷めた声を返す。
「お前は何にも思わなかったのかよ」
「だから今こうして帝人君のとこで働いてるのさ。シズちゃんも薄々気付いてるとは思うけど、彼の魂は間違いなくミカド君だ。彼を見た瞬間すぐにわかったよ。全く、することなすことミカド君と同じなんだから。好奇心旺盛でさ、身体弱いくせに」
「帝人もなのか…?」
「ああ、言い方が悪かったね。身体が弱いのはミカド君。帝人君は健康そのものだよ、風邪なんか滅多にひかないし、運動神経面が心配だけどさ」
「そうか…」
 静雄はホッと息を零す。正確には熱くなった心臓部を冷ますために息を吐いたのだが。
 臨也はもう話すことはないと言わんばかりに静雄に背を向ける。
 静雄も洋館に戻ろうとしたのだが、名前を呼ばれて振り返る。
「静雄さん!待ってください!」
「帝人?どうした」
「どうしたって、どこ行くんですかッ」
「洋館に戻るんだよ」
「今日はその、もう遅いですし、僕の家に泊まっていってください!」
「いいのか?」
「はい!」
 目をきらきらと輝かせる姿が自分の愛したそれと重なる。魂は彼と同じだといっても、帝人に前世の記憶はない。つい抱きしめようとした手をぐっと力を篭めて堪えた。


設定がややこいんです


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コメント
2010/11/19 14:57 ゆな
こんにちは!このお話是非同人誌で読んでみたいです!続きがすっごく気になります!
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