SS部屋 | ナノ
ちみロボミカドくんT

2010/11/14 15:16

アンケが完全に立場逆転パロが一番なので、勿体ないのでちょっとだけ書いたちみロボミカドを載せます
途中で終わります
あ、温泉は裏が書けて満足したのでたぶんもう書かないと思います
中途半端ですみません


 珍しく弟である幽がその兄静雄の家へと訪ねてきた。
 いつでも来ていいと言っているのだが、人気俳優故忙しくてなかなか来られないのだ。
 幽は小さな段ボールを持っている。
「…なあ、幽。それなんだ?」
「うん、俺は兄貴にこれについて頼みたいことがあって来たんだ」
 真面目とも読める表情にごくり、と唾を飲み込む。
 幽が箱を開けると入っていたのは小さな人形。30cm位だろうか。何故かうさぎのような耳が生えている。
「なんだ、これ」
「『お助けロボットミカドくん』、まだ実験段階らしいんだ」
「…で?」
「兄貴、この子の面倒をみてあげてくれないかな」
「はッ?!」
 ロボットの身体を起こせば、そのくりくりとした丸い瞳が開かれる。
「うにゅ?」
「ミカドくんはすごいんだよ。掃除はしてくれるし、まあ物とかたまに壊すけど、ご飯作ってくれるし、たまに失敗するけど、絡まれたりしたら戦ってくれるんだよ、凄く弱いけど」
「…なんか役立たなさそうなんだが」
「あと凄く癒される。このうさぎみたいな耳からマイナスイオンがでてるんだって」
「ボク、がんばります!」
 もふもふとした耳を世話しなく振る。一生懸命な姿に、静雄も胸がきゅんとなる。
──…確かに、可愛いなコイツ。
「頼んだよ、兄貴。俺は今から仕事だから」
「あ、こら…」
 すたすたと走るように去っていく弟に、静雄はちらりと置いていかれた小さなロボットを見る。
「よろしくおねがいします!ボクはミカドっていいます。お名前教えてもらっていいですか?」
「…平和島、静雄だ」
「シズオさん!」
 きらきらとつぶらな瞳を輝かせる姿はまるで子供のようだ。
「…っと、俺は今から仕事だから、家で待ってろ」
「…!いやです寂しいと死んじゃいますいやいやいや!」
 静雄の背中をホールドする。振りほどける強さだが、ロボットのくせに瞳をうるうるさせるのは卑怯だと思う。
「…ッわかった、けどずっと鞄に入ってろよ」
「はい!」
 すりすりと餅肌の頬が擦り寄せられる。よく見れば広い額も気持ちよさそうだ。
 短く切り揃えられたような黒髪は、まるで本物のような質感で、触ってみるとふわふわとしている。
 その手でミカドの頭を撫でてやれば、ふるふると嬉しそうに震えていた。手を離せばもっともっとと言わんばかりに自ら静雄の掌に頭を擦り寄せた。
「…やばっ、遅刻する」
 適当にあった大きめの鞄にミカドを押し入れるとそのまま出る。鞄からうさぎのような耳がはみ出ていたので慌ててそれを押し込んだ。
 珍しく肩掛けの鞄を持っている静雄に上司であるトムは怪訝に感じたようだが、特に突っ込むことはしなかった。
 静雄はいつも通りに仕事をこなす。だが、たまにミカドが無意識にか耳をひょこっと出すので注意が必要だった。
 トムが飲み物を買いに行っている間などに少し寂しそうにしているミカドの頭を撫でてやる。ミカドはその度に「キュイ」と甘えるように鳴いた。
「静雄、次のは毎度懲りないでナイフ持って襲ってくるヤツだから一応戦闘体勢とっとけ」
「うっす」
 寂れたアパートの前に来ると、トムは少し下がり、静雄はその隣にミカドが入った鞄を置く。何かあったら大変だからだ。
 インターホンを押したとともに突進してくる男を片手で止め、手に持つナイフをぐにゃりと曲げる。首の根っこを掴むとそのまま持ち上げる。暴れるので鳩尾を殴れば動かなくなった。
「トムさん、捕獲しました」
「…おー、お疲れ」
 何故かトムは眼鏡をかちゃりと上げ、静雄から目を逸らす。
「どうし─…」
 そこで静雄は気づく。
 鞄から帝人の頭が出ているということに。
「あ…ッ」
「…まあ、人形を仕事に連れて来ちゃいけないとか言ってねえしな」
「ちッ違う!こいつはッ」
「シズオさんっ、おつかれさまです!」
 瞳をきらきらと輝かせているミカドに、静雄は咄嗟にその頭を押さえつける。
「むきゅっ」と鳴いたミカドに、トムは慌てて鞄からミカドを出す。
「おいおい、別に恥ずかしがることなんてないんだぞ。それに、お前の馬鹿力に押されたら壊れちまう」
「ボク、シズオさんになら本望です!」
「しっかしすごいな、この人形。言葉も喋るのか」
「…幽に押し付けられて。ロボットらしいっす」
「ほぉ、ロボットねえ」
 トムがミカドの頭を撫でれば、嬉しそうに鳴く。静雄は誰にでもそういう反応をするのかとムカッとした。
 静雄の視線に気づいたのか、目を細めていたミカドは不意に静雄を見る。目が合うと、ミカドは静雄に向かってばたばたと短い腕を動かす。
「おっ、静雄のとこに行きたいのか。ほら、静雄」
 トムが静雄にミカドを手渡ししようとするが、静雄の片手は捕獲した男で埋まっている。
 どう受け取ろうか迷ったところでミカドは静雄に飛び掛かった。顔面に飛びつかれ、静雄は反射的に一歩後ろに下がる。
「…おい、ミカド」
「ちょっちょっとだけ待ってください!」
 静雄の顔をよじ登っているミカドに、静雄は怪訝そうな表情をする。
 頭の上に登ると、ミカドはそこにぺたんと抱き着くようにして寝転んだ。静雄の頭はミカドが乗るのにちょうどいい大きさだった。
「ミカド!下りろ!」
「いやです!鞄の中だとシズオさんが全然構ってくれないですもん!寂しいです!」
「だからってこれは…ッ」
 引きはがそうとするが、ミカドが静雄の髪を掴んで抵抗するので静雄は自分の髪を引っ張ることとなり、激痛が走る。
「…頭の上にのったら撫でてやんねえぞ」
「いいです。ボクはシズオさんと一緒にいられたら幸せなんです」
 ミカドの耳が静雄の耳にもふもふと当たる。
静雄は他人に一緒にいられたら幸せだなんて言われたことはなかった。寧ろ、敬遠されてばかりだ。
 ロボットとはいえ、ここまで自分に懐いてくれているヤツを無下に扱うのはどうだろうかと静雄の中の良心が叫ぶ。
「…周りに変な目で見られたらお前のせいだからな」
「はい!」
 嬉しそうに静雄の金色の髪をくしゃくしゃとする。
「よかったな」
「もきゅ」
 ミカドは鳴き声のような声を出すと、いっそう強く静雄に抱き着いた。
「きゅ、シズオさん、ボクお腹がすきました」
「あ?お前ロボットのくせに飯食うのか」
「ヤキトリがすきです!」
「しかも肉食かよ」
 きゅいきゅいと静雄に訴える。ちらりとトムの方を見れば、苦笑を浮かべながら「いってこい」と手をひらひらとさせた。
「こいつは俺がなんとかすっから」
「すみません…」
「ごはんー」
 気絶している借金男をトムに預け、ミカドを頭にのせたまま早足で歩きだす。
「焼鳥か…。どっかに屋台とかねえかな」
「硬いもの以外ならなんでもいいです」
「ロボットのくせにか」
「食べ物をエネルギーとしてボクは動いているので、硬いものはエネルギーに変換しずらいんです」
「柔らかいもの…。あっちにクレープ屋の屋台があるぞ」
「くれーぷ?」
「甘いやつだ」
「あまいのすきー」
 どれがいいかと選ばせれば、イチゴの入ったものを長い耳で指す。静雄は自分の分とトムのを買って戻る。
「頭の上に落とすんじゃねえぞ」
「もきゅ、おいしいです!」
 頭の上でもきゅもきゅと頬張るミカドに、静雄は口元を緩める。
「ごちそうさまでした」
「口に付いてねえか?」
「う?」
 両手に持っていたクレープをミカドに持たせ、ミカドを頭の上から下ろす。口の周りにはホイップクリームがついていて、それを舌で舐めとる。
 別にロボットなんだからと思ったのだが、肌の感触はやたらとリアルで、やけに恥ずかしくなった。
「ありがとうございます」
「いや…、」
 ミカドは再度静雄の頭の上に戻る。クレープを受け取ると、また歩き出した。
 周囲から好奇の目を向けられるが、今更なので気にしない。
「きゅっきゅっきゅー」
「…はずいから歌うな」
「わかりました!」
 言うことはちゃんと聞くらしい。静雄に掴まって辺りをきょろきょろと見回している。
「きゅ、ごきぶり」
「あ?」
 ミカドの耳が指し示す方を見てみれば、黒いジャケットを着た男がポケットに手を突っ込み歩いている。
 静雄は眉間に皺を寄せると、それにずんずんと近づいて行く。
 臨也は静雄の殺気に気づいたのか戦闘体勢にはいったが、静雄の頭の上にのっているかわいらしい人形を見て噴き出す。
「シズちゃんなにそれ!ギャグ?ギャグなの?」
「ごきぶりー」
「ああ、ゴキブリだな」
 ミカドの中では黒いイコールゴキブリらしい。静雄はどこか勝ち誇った笑みを浮かべ、ミカドを頭上から降ろす。
「ミカド、今からちと暴れるから離れてろ」
「うにゅ、ケンカですか?」
「ああ」
「ならボクにお任せです!」
「…あ?」
 確か、幽が絡まれたら戦ってくれるとかなんか言ってたような気がする。だが静雄は首を横に振った。弱いと言われたのにそんなヤツを戦わせたくない。
 ミカドにクレープを預けようとするが、静雄の制止を聞かないまま臨也の方へと走っていく。
 が、その途中で転んだ。
 静雄だけでなく臨也も動きをぴたりと止める。
「…え、シズちゃんなにこの子」
「ぴゃああ」
「ああもう泣くな!」
「はい!泣きません」
 ミカドの瞳から涙は流れていない。ロボットだからそういうものなのだろう。だが、瞳は潤んでいた。
「もう一回がんばります!」
「いや、もういいから戻ってこい」
 今度はちゃんと臨也の前に着くと、臨也は赤銅色の瞳でじっと小さなミカドを見下ろす。
「てやっ」
「「!?」」
 攻撃をしているのかどうかは知らないが、ミカドは臨也の脚にふわふわの耳をぺちりと叩き付けた。
 正直言って痛みなんか感じない、寧ろ柔らかくて気持ちがいい。
──なにやってんだあいつ!
──え、何やってんのこの子。
「えいっ、えいっ」
 暫く沈黙が走る。だが、一生懸命な姿に静雄も臨也も胸がきゅんと鳴った。
「何この子可愛い!シズちゃんちょうだい!」
「ああ?ふざけんな!ミカドは俺のだ!」
 臨也はミカドを抱き上げくるくると回る。ミカドはぺちっと臨也の頬を耳で叩く。
 臨也は頬を叩かれた訳ではなくただ生理的な理由で赤くして後ろへ倒れる。
 ミカドは臨也の手から抜け出し、静雄に「どうですかッ」と褒めてほしいオーラを出す。
 寄ってきたミカドの頭を撫でると、ミカドはきゅいきゅいと嬉しそうに鳴いた。


字数の都合で一回切ります


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