SS部屋 | ナノ
温泉静雄その六

2010/11/10 08:06

 結局昼はうどんを食べ、お土産屋を徘徊した後、残り半分は明日に見ようと池袋にもよくあるゲーセンで遊んだ。
 頭を使うゲームやシューティングゲームは帝人の方が得意だったが、格ゲーは静雄の方が何倍も上手かった。やったことがあるのかと尋ねたが、初めてらしい。たった100円で何度も相手と闘い、周りには野次馬が集まった程だ。
 存分にゲームを楽しんだ後、暗くならないうちに旅館へと戻る。今度の風呂は別々に入った。少し期待していたところもあるのだが、静雄が笑顔で「後で卓球しような」と言ったので、今はそういうことをするつもりはないのだろう。
 静雄が風呂に入っている間、帝人は髪を乾かしながらマッサージチェアに座っていた。久しぶりに身体をよく動かしたせいで身体はばきばきと鳴った。
「あー…」
 ふぅ、と息を吐いていれば、出てきた静雄に頬をむにっと掴まれた。
「よし、卓球だ」
「そんなに楽しみにしてたんですか?」
「おう。ラケットを壊さないよう力加減するのは面倒だが、結構強いんだぜ」
「僕、やったことないんですけど」
「そ、そうなのか?」
 じゃあまずやり方を教えようという話をしながら卓球台の置いてある広場に着くと、漆黒の艶やかな髪を持つ顔の整った青年が浴衣姿で立っていた。
「やあ、みっかどくん!」
「臨也ァ…!」
「ああ、シズちゃんいたんだ。帝人君しか目に入らなかったなあ」
 そこに立っていたのは静雄の宿敵である折原臨也。彼がどうして此処にいるのかは、帝人の部屋に仕込んである盗聴器とカメラで帝人達の宿泊先を知ったからだ。一日遅れだったのは、秘書である波江に「今ある仕事全部終わらせてからいかないと殺すわよ」という脅迫紛いのことを言われたからだ。別に従う義理はないのだが、無断で留守にして資料をいろいろとばらまかれても困る。
 旅館に訪れた理由も静雄と帝人の邪魔をするためだ。
「ははっ、残念だったね、シズちゃん。俺がそんなラブラブお泊り会を邪魔しないわけないでしょ?あ、でも昨日のうちにやっちゃったかな」
「……」
「あ、その顔はやったんだね。帝人君顔真っ赤!正直のところ帝人君ってどうなの?気持ちいい?」
「天国にいるようだ」
「へえ、いいなあ」
「…あの、この会話はちょっと」
 自分に関する会話でも、この話題は恥ずかし過ぎる。帝人が静雄の裾を引けば、静雄は落ち着かせるように帝人の頭を撫でる。
「ノミ蟲、一言で言う。とっとと帰れ」
「えー、やだ。あ、じゃあ卓球勝負しようよ。勝った方が帝人君を独り占め。負けた方が帰る」
「帝人は元々俺のもんだ」
「断るんだったら俺、君達が帰るまでずっと邪魔してあげる」
「……帝人」
「静雄さんの好きにしてください。僕、静雄さんのこと信じてますから」
「おう、絶対勝つ」
 帝人としては自分が卓球をやらなくてよくなったことは結構嬉しい。静雄と臨也は各々にラケットを構える。帝人は静雄の隣から卓球台の隣へと移動した。いつまでも静雄の隣にいたら勝負に巻き込まれかねない。



なんか臨也出てきた
すぐに消えます


back * next


コメント
*
名前:

メールアドレス:

URL:

コメント:

編集・削除用パス:



表示された数字:



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -