温泉静帝その二
2010/11/06 13:32
「…うわあ」
帝人は感嘆の声を漏らす。
山奥にあり、登るだけでも全身の力を使い果たしてしまったわけだが、たどり着いた旅館は確かに来た甲斐がある。
「凄いですね」
「ああ。手続きしてくるからちょっと待ってろ」
「はい」
静雄が何かの用紙に名前を書いているその後ろ姿をじっと眺める。そわそわして待ち切れなく、隣にひょこっと立てば、静雄は優しく頭を撫でてくれた。
「弟さんですか?」
「え、いや…」
恋人だなんてとても口には出せず、顔を俯かせると受付の人が首を傾げる。静雄は名前を書き終えると、帝人の肩を掴んで引き寄せる。
「コイツは俺の大事だ」
「え?あ、ちょっ、静雄さ…」
大事って何ですかと言おうとしたが、ぐいぐいと背中を押されて言葉にならなかった。
「ん、ここだな」
静雄は歩いていた脚を止め、急停止する。開けた障子の先は少し古いところはあるが、綺麗に整頓された部屋だった。畳のいいにおいがする。二部屋に別れているようで、片方は寝る専用の部屋のようだ。
「ここさ、各部屋に露天風呂があるんだとよ」
「各部屋に?凄いですね」
「ああ。…なんでもできるな」
「え」
二人しかいない部屋なのに内緒話をするかのように耳打ちされ、帝人は顔を真っ赤にする。
──…これは、期待してもいいんだよね。
静雄は荷物を部屋の端に置きながら珍しく鼻歌を歌っている。帝人は思い切ってその広い背中に抱き着いてみた。
静雄の動きはぴた、と止まり、ギギギと振り返る。
「…早速、風呂入るか?」
「え?」
それはそういうことを意味してるのかと琥珀色の瞳を覗き込む。静雄はあんま見んなと目を逸らした。
「僕とシたいんですか?」
「おま…ッ!………そうだよ、悪いか」
「…僕だって静雄さんとシたいです」
静雄と身体を初めて繋げたのは一ヶ月前、一度だけだ。
それから全く手を出してこなかった静雄に不安を抱かなかった訳はない。
確かに静雄との行為は身体に負担を伴うが、それ以上に感じる幸福は大きなモノだった。
静雄は我慢できないと言わんばかりに帝人を横抱きにする。
「…身体、洗うぞ」
「はい…」
少し頬を赤くして首を縦に振る。すり、と固い胸板に頬を擦り寄せれば、静雄の身体が強張ったのがわかった。
次は裏だぜうへへ
心折れないよう頑張る
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コメント
2010/11/07 13:59 あき
すごく…たぎります
帝人の仕草がいちいち可愛いくて、
静雄さんの仕草がいちいち男前でどうしたらいいかわかりません←
温泉ていいですね!
ごちそうさまです^P^
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