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サイ帝の続き書いてみた(最初から

2010/10/23 16:03

『みーくんみーくん』
「サイケ君、ごめんね。今から出なきゃいけないんだ」
『…ッ、みーくん今日はオレと遊んでくれるって約束したもん!』
「ごめんね、帰ったら遊んであげるから」
『もう知らない!みーくんのばかばか!きらい!』
 プツン、とソフトが強制終了される。
 帝人は溜息を吐くと時計を見、鞄を取った。サイケはその様子をパソコンの画面越しに見つめる。
『…みーくんのばか』
 ぽろぽろと不思議な桃色の目から涙を零す。
―─オレと遊ぶって約束したのに。
―─オレがただのソフトだから?オレが臨也くんのコピーだから?だからみーくんはオレを優先してくれないの?
 帝人が一つ削除ボタンを押してしまえばなにもかも消えてしまう存在。
 サイケは涙を拭い、電脳世界へと旅立った。


「だからってなんでうちに来るんだよ」
『オレは臨也くんに会いにきたんじゃないよ!がっくんに会いにきたの!』
「ていうかさ、ただの音楽再生ソフトのくせになんで俺のパソコンにハッキングできるの?どうやってセキュリティ突破してるわけ?帝人君が手助けしてるわけじゃないよね」
『ふーんだ、みーくんのことなんかしりませんーっ』
『また喧嘩したの?』
『がっくんがっくん!みーくんってば酷いんだよ!』
 ぐすぐすと鼻水を啜りながら学園天国に抱き着く。
 学人はよしよしとサイケの頭を撫で、泣き止ませようとする。
『ぅー…』
「泣き止んだらさっさと帰ってくれる?今日は大切なお客さんが来るんだから」
『大事な商談?』
「そういうのじゃないんだけど」
『じゃあ居る』と臨也のパソコンの画面に居座る。
 臨也が溜息を吐くと来客を告げるインターホンが鳴る。臨也はバッと立ち上がるとすぐに玄関へと向かう。
 それほど大切な客なのだろうか、と学人の頬をぷにぷにと引っ張りながら遊んでいると、聞き覚えのある声が聞こえる。
「すみません、遅れてしまって…」
「ああ、いいよいいよ。どうせサイケでしょう?」
「…まあ、はい。でもよくわかりましたね」
「今サイケがこっちに来てるんだよ」
「え…」
『…ッ』
『あ、サイケ!』
 学人の呼ぶ声も聞かずにサイケは飛び出す。学人はその後を追って行った。
「あ、学人も行っちゃった」
「サイケ…」
「すぐに帰ってくるよ」
「そう、でしょうか」
「あ、そうそう。頼まれていたやつなんだけど─…」


──みーくんのばかばか!やっぱり臨也君の方が大事なんだ!オレなんかより、ずっと…!
 ぷるぷると目尻に涙を溜めながら震えていると、後ろからついて来ていた学人がサイケに追い付く。
『サイケ…、大丈夫?』
『がっくんには関係ないもん』
 ふんっ、と顔を背ければ、学人は困ったように笑う。
『帝人さんにも色々と事情があるんだよ』
『知らない、わからないもん』
 学人に八つ当たりをしてもどうしようもないことはわかっている。だが、このもやもやする気持ちを吐き出す方法がわからなかった。
『オレ、変なのかな。みーくんのこと考えてると胸がもやもやするんだ。何処か壊れてるのかな。エラーかな。…オレ、消されちゃうのかな』
 段々声に勢いが消えていく。目尻から溜まっていた涙が溢れ出して止まらない。
 学人はサイケを後ろから抱きしめる。そして、自身の緑色のサングラスをサイケの耳に掛けた。
『大丈夫だよ。サイケは消えたりしない』
『でも…』
『不安なら帝人さんに聞けばいい。ね?』
『不安が消えるまで僕のサングラス貸してあげる』と微笑む。屈託のない笑顔に、幾分かサイケの心は落ち着いた。
『…うん、ちゃんとみーくんに聞いてみる』
 サイケの言葉に学人は胸を撫で下ろした。


「サイケ!」
 サイケが自身のソフト画面に戻れば、パソコンの前には既に帝人が待機していた。
「ごめんね、サイケ。僕、サイケになにも言わないで」
『ねえ、みーくん。みーくんはオレのこと消さない?』
「な、なに言ってるの!当然でしょ!」
 帝人の言葉に、サイケは学人のサングラスを外す。その時に帝人はサイケが学人のサングラスを掛けていたということに気が付いたようだ。
『なんで臨也君のところに行ったの?』
「ああ、サイケのバージョンアップを頼もうと思って。容量が大きくなってたからね。そのうちエラー起こしたら大変だし」
『あ、それで胸が…』
「胸?」
『ううん、なんにもない』
 帝人がUSBを差し込めば、パソコンはそれをインストールする。
 サイケはなんだか心が軽くなったような気がした。
「どう?」
『なんだか楽になった!』
「そう、よかった」
 だが、サイケの胸のもやもやが消えることはない。
 それが恋心だと気づくのは、もう少し後のことだった。



続き書いてみた
小説打ってると肩が痛くなる


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コメント
2010/10/23 22:36 もちこ
素晴らしい萌えをありがとうございますん!
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