SS部屋 | ナノ
養子パロ静帝

2010/10/14 16:00

 帝人は静雄に肩車をしてもらいながら歌詞のない歌を口ずさむ。
 初めは普通に手を繋いで歩いていたのだが、池袋の人混みに帝人がさらわれそうになり、仕方なく肩車をすることになった。
 だが帝人はそっちの方が嬉しそうで、静雄の髪をいじって遊んでいる。
 通行人は池袋最強と呼ばれる男が10に満たないであろう子供を肩車し、髪を無防備に遊ばせているという状況に目を向ける。それも静雄が睨みをきかせることで解決したのだが。
「お、ここだ」
「おすしー」
 帝人はきゃっきゃと笑いながら足をぶんぶんと揺らす。その度に静雄の胸板に細い脚が当たった。
 着いた先は『露西亜寿司』。
 たまには外食をしようという静雄の申し出に、帝人は「おすしが食べたいです」と目を輝かせながら言った。
 寿司と言えば顔なじみの多い露西亜寿司だろうと思い連れて来たのだ。
「帝人、何が食べたい?」
「んと、しろいやつ」
「イカか?」
「うん!」
 目の前で他の客の寿司を握るロシア人の板前に「イカとお子様セットをわさび抜きで。あと寿司一人前そっちはわさび入りでな」と言えば、帝人がぐいっと静雄の服の袖を引く。
「わさびってなんですか?」
「あー、寿司に入れる辛いやつで。…たぶん帝人には無理だ」
「なんでわかるんですかっ、僕もわさび食べたいです!」
 食べたい食べたいとごねる帝人に、ちらと板前を見れば笑っていた。
(次にトムさんと来たら絶対突かれるな)と思いながら「やっぱりイカもわさび入りで」と言えば、帝人はわあいと静雄に抱き着いた。
 それだけで全てを許してしまう自分はダメな親なんだろうなと思いながら、帝人が泣き出した用に冷たい水も注文しておいた。
 目の前に出されたほんのりとわさびの緑が浮き出たイカの握りを、帝人はじっと見つめる。
 そして、醤油を付け一口口に入れた。
「……」
「帝人、どうだ?」
 水を片手に待機していたのだが、反応がない。
「帝人…?」
 帝人は何も言うことなく静雄の腕をガシッと小さな手で掴む。
 そしてその次の瞬間、両目から涙をぽろぽろと流し出した。
「ふっ…ひっく」
「だから言っただろ?ほら、水飲め」
 渡した水を全て飲み込むと、帝人は目尻に溜まった涙を自分の服の袖で拭う。
「…鼻がつーんってします」
「俺も餓鬼んときは食えなかったけど、大人になったら食べれるようになったんだ」
「僕も大人になったら食べられるようになりますか?」
「…まあ個人差もあるが、そのうちな」
 わさび入りのタコの握りを平然と食べながらそう言えば、帝人はおおっと尊敬の混じった声を出す。
「ほら、早く食べろ。長居は店に迷惑だぞ」
「はいっ」
 えび、たまごなどが並んだわさび抜きの寿司を食べながら、「いつかお父さんと一緒にわさび入りで食べられるようになります!」と意気込んだ帝人に、静雄は微笑みを浮かべながら指切りだと小指を出した。



わさびの食べられない帝人ってかわいいなあと
ちなみに私はわさびが大好きです


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コメント
2010/10/16 13:03 ぐみお
ショタ帝人最高ですよねっ!!!!
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