失われた焔 | ナノ





アドリビトムは多国籍ギルドと言われるほど様々な国、種族の人間が所属している。その為勿論のこと様々な国を股に掛けて活動をしている。

「なぁ、この辺りで朱い髪の俺よりちょっと背が低い男見てないか?緑の瞳の。」
「さあ?ここら辺は人の出入りが多いから、そこまで詳しくは見てないね。」

街の出入り口に店を構える食材屋の前にユーリは居た。半年前にいなくなった少年を、ユーリは独自に調べていた。とは言うものの、個人で探すのは全く情報も無く半年経った今でも足取りすら掴めていない状況だった。
ユーリはここでもないのか、と一人溜め息を吐きながら船からでる口実として受けた依頼をこなしに街から一旦離れることにした。

暫くして依頼もこなし、もう一度街の出入り口に来た時だった。

「ああ、そこのお兄さん!」
「ん、俺のことか?」
「そうそう!」

ユーリは先程街を出る前に聞き込みをした食材屋に呼び止められた。

「さっきお兄さんが言ってたような人、ち見かけたわよ!」
「!本当か?!」
「ええ、あ、でも……」
「そいつの瞳の色、見えた?」
「ああ、お兄さんが言ってた通り緑の瞳だったよ。結構汚れた服着て人を避けるように露地には行っていったよ。」

嫌な想像が増えていく。それに気付いたのか気付いていないのか食材屋はそいつが何かしでかしたのか、と聞いてきた。

「いや、別に…ただある日突然いなくなっちまってね、探してたんだよ。」
「へえ、まぁ、本人か断定できないけど、そいつならまだこの街にいるんじゃないかい?この辺りは森に囲まれてるから街の出入り口と言ったらここくらいだし。時間もあんまり経ってないからね。」
「…そうか、ありがとうな。」

ユーリは周りを見渡した。本当ならば報告をしなければならないのだろうがそんな事最早ユーリの頭からは抜けていた。仮にあったとしてもこの場を離れた隙にルーク(かはわからない)がこの街を出てしまったのでは意味がない。
兎に角、ユーリは他と比べて目立つ朱髪を探すことにした。

「宿にもいない、か。」

しばらく街を歩き回り、宿や色々な店にも寄ったが一向に見つかる兆しがない。まさか、すれ違いになったか、と取りあえず街の外に出ていないか先程の食材屋のところまで戻ることにした。

「……にしても、そんなデカい街でもないのにこりゃちと人が多すぎやしねーか?」

この辺りには観光の出来る場所があるのか旅人が目立つ。人をかき分けるように前に進みながら食材屋へと足を進める。
ここまで人が多いのならばもっと森を切り拓いて街を広くすればいいのに、と内心舌な出入り口が見えてきた。漸く着いた、と早速食材屋に声をかけようとしたが、それは叶わなかった。

「……っ、」

あまりのことに声を失った。
それは先まで探していたもので。

「ルーク……」

確かにその人だった。

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