失われた焔 | ナノ





それから約半年、ルークの消息は掴めないままだった。というのもライマ国が公になって捜索をしなかったのだ。ライマ国では今王位後継者をめぐっての派閥抗争が繰り広げられている。この事態にルーク派は一気に衰え、アッシュ派が勢力を伸ばしているのだ。
だがそんな事のためにルークの無事さえもわからないままなどアドリビトムは黙ってはいなかった。ナタリア率いるライマ国の重鎮達はすぐに帰国し直接国に掛け合っている。そこで意外や意外、アッシュがかなり積極的だったのだ。本人としてはこれ以上国の顔に泥を塗らすわけには云々と言っていたがやはり兄弟、心配はするのだろう。
だがそんな彼らをあざ笑うかのようにとうとう進展がほぼ無いまま、この半年が過ぎてしまった。

進展と言えば、一つだけあった。ルークが失踪して数週間したとき、彼の美しかった朱金の髪が失踪した町のすぐ近くの森に散らばっていたことだった。これはライマ国が捜索を行った、と公表した。だがそれ以外は手がかりがない、と確かな証拠もないはずなのに"生存は望めない"とそれからは一切捜索は行われなかった。

それでもアドリビトムは諦めなかった。今日のアドリビトムでは独自に捜索をしつつ、それでもギルドである彼らは依頼も淡々とこなしていた。

「……あれから半年…だな。ルーク大丈夫かな?」
「わからない、ただ、犯人から脅迫状も届かないらしいし…。」

ルークと仲の良かったロイドとクレスは行動派で、率先してルークを探していた。見つからなくても必死で探していた。
彼らはうんうんと悩んだが悩んだところで答えもルークも見つかることはない。

「なぁ、なんで脅迫状が届かないんだ?」
「え?」
「犯人はルークが王族だって知らないのか?」
「それ以外でルークが浚われる理由はないと思うけど…」

確かに何故だろう、とクレスはうん、と唸った。ロイドは頭をポリポリと掻いた。それから変な質問して悪い、と謝った。

「んなもん簡単だ。」

ふと声がして二人は振り返った。するとそこにはユーリがいた。
ユーリはいつもの余裕を持った表情が消えており、その目には確かに負の念が籠もっていた。

「ルークがいなくなって得する奴がいんだよ。」
「え?なんでルークがいなくなって得するんだよ?」
「クレスは気付いてんじゃねーの?」
「……。」
「な、なんだよ、教えてくれよ!」

黙るクレスにロイドは少し戸惑った。嫌なことなんだろうとわかってはいたがどうしても聞きたい。
クレスに詰め寄ればクレスはえっと、と渋った。

「いんじゃねーか。あいつのお陰で王になれねーかもしれない奴が。」
「…それって……アッシュのことか?…でも!」
「アッシュ自身が命じたかは知らねーが、貴族サマには色々あるみたいだぜ?」
「そんな……!」

仲間を疑いたくないんだろう、ロイドは否定しようとした。だがユーリにそう言われれば否定のしようがない。
ユーリの言う貴族の色々、など考えたくもないがそんなことのためにルークが浚われるなどあってはならないとロイドは思った。

「ルーク…無事なのかな…?」
「どーだかな。まあ別に犯人にあの坊ちゃんを生かしておく理由はないんじゃないか?」
「嫌なこと言うなよ!」
「二人とも、やめないか!」

それまで黙っていたクレスが二人に不穏な空気が流れ始めたことで二人を止めた。ロイドはまだ少し怒っているのかユーリを睨んでふん、とそっぽを向いてしまった。
ユーリはもう話すことは無いとばかりに船の出入り口へ向かった。

「ユーリ、どこか行くのかい?」
「ん?ああ、依頼だよ。」

ユーリはじゃあな、と言いながら左手を挙げてひらひらと降った。そんな姿もロイドは気にくわなかったのかむ、とむくれた。

「ったく、何だよ、さっきのユーリ!ユーリはルークのこと心配じゃないのかよ!」
「いや、ユーリも心配してるんだよ。だけどユーリも素直になれないんだね。」

クレスはロイドをなだめながらにこりと微笑んだ。

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