失われた焔 | ナノ





「お、どうしたお坊ちゃま、珍しいなぁクエストを受けるのか?」
「うお!!……っ大罪人か…べ、別にお前に関係ないだろ。」

驚かせるなよな、とむくれるルークに大罪人と呼ばれたユーリはわざとらしく声に出して笑った。それすらからかわれていると思ったのかルークは更に声を荒げて怒鳴りだした。
この時間帯のホールはクエストに行く者達で賑わっている。ホールに出て早速ユーリに捕まったルークはユーリに睨みを利かせガイとティアと共に大股で外へと出て行ってしまった。

「ありゃ、完全に嫌われてんのかね。」
「あ、ユーリ!どうしたんです?」
「エステルか、いーや、なんでもねーよ。」

エステルはそうなんです?と首を傾げたがすぐに戻し、そういえば、と話し出した。ユーリはエステルの話を受け流しながら聞いていたがすぐにエステルにちゃんと聞いていないことがばれ、もう、と小さく怒られた。
いつもはちゃんと聞いているのに、何故だろう、今日ばかりは聞く気になれなかった。

「(変に胸騒ぎがしやがる。……何なんだ?)」
「ユーリ…本当にどうかしたんです?ぼーっとしてますよ。…は、まさか風邪をひいたのでは!」

年中無休24時間営業で胸元をさらけ出してるからですよ、とエステルはポコポコと怒り出した。年中無休24時間営業って俺はコンビニか何かか、とつっこみをいれたくなるのを押さえユーリは馬鹿な事言ってんなよ、と言いながらクエストを受けるためアンジュに向かっていった。取り合えずば胸騒ぎは放って置くことにした。

その時の胸騒ぎを放っておいたことをユーリは後々後悔することになる。

***

ユーリがクエストから帰ってきた時、バンエルティア号では大きな騒動が起こっていた。

「おいおい、こりゃ一体どんなお祭り騒ぎだよ。」
「お祭りだったらどんなに良かったんだろうね。」

ユーリの幼なじみであるフレンはいつもならユーリの行動を更正させようとしているようでそう言われれば目くじらをたてて怒り出すものだが、今回ばかりは嫌みのような返事をした。その言動がユーリにただ事ではないと思わせた。
周りを見渡せばその騒動の中心にはライマ国の者がいた。ガイやティアがその場でジェイドの指示を受けているが、ルークが見当たらない。いよいよ嫌な胸騒ぎの原因が分かってきてユーリはフレンに向いた。

「おい、何があった。」
「ルーク様が…行方不明になられたそうだ。」

どうもユーリの嫌な予感は的中したらしく眉間にどんどん皺が寄っていく。
何故貴族を毛嫌いしているユーリが貴族であるルークを気に留めるかは定かではないがともかくユーリはルークが色んな意味で気になっていたようだ。

「すみません……私の責任です。」
「ティアだけじゃないさ。それに、外に連れ出そうって言い出したのは俺なんだから。」
「いい加減にしなさい。原因などもうどうでもいいのですよ。今はいかに早くルークを見つけることでしょう。」
「……はい。すみません。」

どうやらその後の話によると三人は比較的簡単な討伐クエストとしてコンフェイト大森林に行ったらしい。
クエストは難なくこなせたようだがルークが折角外に出たのだから、とせがむものだから少し近くの街へ行ったという。迷うほどの大きさの街ではなかったのだが気付くとそこにはルークはおらず、探し回ったがルークの代わりにルークが所持していた剣だけが路地裏で発見されたらしい。
話に合わせてガイがその剣を見せるとジェイドがふむ、と考えるような声を出した。

「話から察するにそれはルークが王位後継者候補だと知っている者の仕業でしょう。その内に本国へ脅迫状が送られるかもしれません。」
「……っ!」
「まぁ、そうなれば私達ルークの護衛役は罰せられるかもしれませんねぇ。」
「旦那!ふざけてる場合か!?」

ジェイドはこれは失敬、と眼鏡をくい、とあげた。しかしジェイドも本当に困っているのか打開策を中々話さない。
ガイもティアもルークを大切に思っているのには変わりないのだから何とかならないのか、とジェイドに詰め寄った。バンエルティア号に乗っているほぼ全員が居るのにホールはしん、と静まり返っていた。

「とにかく本国へ鳩を飛ばします。遅かれ早かれ本国には知られることなので。」

ジェイドは部屋に向かっていった。それからはちらほらとどうすればいいのか、などと話し声が飛び交った。
ただユーリだけはじ、と押し黙って他の者達をどこか遠い世界のことのように見ていた。

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