*蔭間パロ京関+木榎 *右が花 「可笑しいでしょう?あの人、一番人気の蔭間花魁なんですよ。なのに、外の男─しかも堅物で有名な木場ってお役員に惚れてるらしい。僕にはわからないな、あの人の考えることなんて」 まあ誰にもわからないだろうけど、と少年は薄く笑った。 氷のような笑みである。冷ややかな瞳に潜むのは嫉妬か羨望か、それとも自嘲か。 「榎さんは綺麗な花なんです。それこそ座ってるだけで人が集まるくらい。だからあの人くらいに人気が出ると、閉じ込めなくちゃいけなくなります。逃げられたら困りますしね。それに比べて僕なんかは── ─あの人が薔薇なら、僕は名も無き道端の花、てところでしょうか。どこにでもありそうな平凡な花。だから僕は外に出してもらえるんです。出ないと相手がいないし、そうしたら食い扶持も稼げない。僕は身寄りもないですから、逃げられないってことまで計算されているわけです」 酒が入り、たどたどしい口調は一変、流暢に喋り続ける。 「でもですね、僕の方が榎さんなんかより絶対倖せなんですよ。だって僕は売れないですから、よほど初心な人にしかね。だから僕、実はまだどーていなんです」 童貞だって?相当売れなかったのか、それとも店主に大事にされていたのか。この顔で売れなかったとは思えない。恐らく店主が大切にしているのだろう。 「だからね、童貞を好きな人に捧げられるんです。本当に僕が好きになった人に。…もらってくれますか?僕のはじめてを、ぜんぶ」 「…僕で、いいのかい」 「そうじゃ、ないです。あなたがいい。あなたに、抱いてほしい」 「どうして、僕なんだ」 「ずっと前から、知ってました。ずっと好きでした。優しいから。僕を好きって、いってくれたから」 *所々おかしな所はスルーで |