memo | ナノ
▽チョコレヰト・キッス


バレンタインだから



「京極堂、是…チョコレイトだが、いるかい」
「ん?…リキュールボンボンじゃないか。どうしたんだ?君の薄給じゃあ生活費だけでも赤字だろうに」
「煩瑣いな。余計なお世話だ。榎さんに貰ったのだ」
「君ねぇ。仮にも僕は君の恋人だぜ?今日という日に恋人に貰い物を贈る奴があるかよ。嫌われるぞ」
「なら君は僕を嫌うのか?」
「…っ」
関口、無意識の勝利。



関口はもぞもぞしている。
「関口君、君ね、少しは落ち着けよ。茶は溢すなよ」
溢す(関口君は期待を裏切りません)
「あっ、つ…」
「馬鹿、早く拭け!」
「あ、すまな、」

*濡れたので着替えました*

「これ…ごめん、ぐちゃぐちゃになった…」
関口が包装紙が濡れた包みを差し出す。
京極堂は呆然とそれに手を掛けて固まった。
「…なんだ、僕に飽きたのかと思っていた」
「な、んだよそれ」
はにかむ京極堂。つられて赤面する関口君。
「最近、来てもすぐに帰ってたろ?今日だって、榎さんに会った後で来たみたいだし」
───君の一番はずっと僕の筈だろう───
「きょうごく、どう」
京極堂も関口も赤面して押し黙る。
「…あの、最近はずっと、是、君が気に入ってくれるように、って、いいの探してて。榎さんが先だったのはただ、偶々その店に近かったから、で。榎さんがくれたの、高そうだったし───こんな安物より、その方が、いいかと」
「馬鹿を云うなよ」
「すまない…」
謝るなよ、と京極堂は関口の手を引き寄せ軽く口接けた。
「高いものとか、美味いものとか、そういうことを求めているんじゃあない。どうせ君は味音痴で売れない小説家だからね、期待はしていないよ」
「一言多い」
「君が僕、の、た、め、に選んでくれたことが大切なんだ。わかるね?」
「あ、」
じゃあ───
「こんなもので、良かったら」
「こんななんて謙遜はいいよ、何より嬉しいんだぜ」

───仮令板チョコでもね。


*120214
*チョコレイトもしくはチョコレヰトという表記が好き


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