「翼さん!」
「翼さーんっ」
「つ、ば、さ、さ「うっとおしい」
へらへらしているこの女はなまえというらしい。どうも俺につきまとっていて、何がしたいのかはよく分からない。ただ、
「あの、つ「うっとおしい」
ぶーぶー。横で声を上げるその女。酷く気が散る。俺がベイを弄る横、丸太に腰掛けて足をぶらぶらと揺らす。どうにか大人しくしていられないものか。視線だけをそちらにやると、ずっとこちらを見ていたのか目が合って、ふふふと笑った。精神を揺さぶる上に、無駄に可愛いのだ。
その表情が憎めなくて、俺はいつも追い返せない。
「静かにしていてくれないか」
「え、はい!」
足の動きは止めたが、痛いくらいに顔に刺さっているのを感じる視線に意識を持っていかれる。つきまとわれてどのくらいだろうか。俺はついにそいつに手を伸ばす。
「キスされたいか?」