風を感じて目が覚める。夜の冷たさに体が震える。カーテンが揺れるのに気付き目をやれば、開け放された窓。
「…翼?」

意外と外は明るかった。月明かりで足元は覚束無い事もなく。探していた人を見つけた。声がかけられなかった。後ろ姿で顔は見えなかったけれど、その背中が何か寂しげで。それでいて、あまりにもその姿が綺麗で息が詰まった。私にはどうしてあげることも出来ないんだと知ったあの日以来、何も聞かず、追求しなかった。でも、どうしたって苦しい。好きだという気持ちが空回りして泣きそうになって、思わず後ろから抱きついた。
「…来てたのか」
軽く振り向いた翼の顔は逆光で暗い。でも僅かに感じた。



肩越しに見える月は優しく柔く



彼も泣きそうだった。

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