「あんな風に、自由に飛びまわれたらなあ、」
万人が一度は願うようなことを、大空を見上げて言った。誰でも夢に見ることがあるはず。 私も例外じゃなく、この状況から解放されたかったもので、彼の前で本音を漏らした。仕事の関係もあるせいか、あまり自分の考えを口に出すことのなかった私がそんなことを言ったことに驚いたのか、翼が足を止めて振り返る。
「…なまえもそんなこと言うんだな」
物珍しそうに言うものだから、ちょっと顔をしかめてやった。
翼は苦笑して、いつの間にか頭上高くを舞う鷹に目を細める。
「俺だって、そろそろ奴らを追うの飽きてきた」
今度は私が驚いた。彼は何が何でも奴らを倒したいんだと思ってた。
「まさか翼がそんなこと言うとはね」
翼も例外じゃないな。顔を合わせて笑った。鷲は旋回してこちらへ向かい、翼の差し出した腕に舞い降り、それから、
「え、ちょっと、痛…っ」
私の肩に飛び移った。
「お前も懐かれたのかもしれないな」
良かったなとまた前に向き直り歩く翼。つつかれながらもその事実に嬉しくなる自分がいた。

これからもずっとこうやって近くにいれるのなら、私は飛べなくてもいいと思った。

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