「貴様、本当に能がないな」
ムギャッ、品の欠片もない声を発して抱えていた書類をぶちまけた私を見て、竜牙様はそう言った。
「す、すみません…」
どっかり座っている竜牙様が私がしゃがみこんでそれを拾い集めているのを軽く見やり鼻で笑う。全く、なぜ私が竜牙の側に置かれているのか不明である。突然拉致の如く連れてこられたかと思えばこんな生活を続けて数ヶ月。未だに理解できないけれど、気付けば竜牙様にすっかり心酔している自分がいて。その圧倒される雰囲気や強さに魅了されているのだ。そんな自分に呆れる。抱くだけ無駄だろうに、日々気持ちは増していくからタチが悪い。まるで竜牙様の力のようだ、なんて馬鹿馬鹿しいことを考えながらチラと横目でふんぞり返る主人を見た。目が合った。
「なまえ、」
ブワッ、一気に顔に熱が集中した。思わず拾った紙束で顔面を隠すと、クククと笑う声がした。恥ずかしい。
「見ていて飽きんな」
その人はいつだって私を虜にするのだ。



連れ帰った時から、俺の方が酔っているというのに



「竜牙様、その女はなんなのです?」
「貴様なんぞに晒してやる気もないわ」



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