｢彼氏できた｣
一瞬、世界が止まった。今俺の目の前にいるこいつは今、なんて言った。
｢うっそ…｣
｢まじだよ。チャウシンよりイケメン｣
してやったりと口端を上げる。有り得ねえ。俺ら二人で会ったりしてたし、まさかこんなこと言われるなんて微塵も考えなかった。俺はまだ言葉が出ない。正直ここまでショックを受けるとも思っていなかった。
｢あれ、傷ついた？チャウシンもかっこいいんだから｣
そんな落ち込まなくても、と、停止した俺の二の腕を叩いて笑いかけてくる。こいつに悪気はない。俺だって遊び回っていたし、こいつに対してどんな感情抱いてるかなんて想像していなかったんだ。伝えていないのであれば分かってもらえるとも思わないが、そのせいでこの結果を招いた。なんて脳天気な性格をしたものだ。
｢なまえ、｣
｢なにさ｣
絞り出した声は思った以上にはっきりしていた。
｢好きだ｣
｢なに言ってんの？｣
クスクス笑う彼女は全く真に受けない。俺の想いは行き場を失った。