「嘘、でしょ…」
銀糸がはらりと宙を舞う。つんざくような叫びは、届かない。私の耳はすべてをシャットアウトしていた。目の前に広がる光景が信じられなかった。頭が拒否反応を起こす。
「や…っ」
本当は戦ってほしくなかった。今まで傷付いてきた沢山の人たちを見て、翼もああなったらと苦しくてたまらなかった。

それが、今。



脳裏に今朝の貴方の笑顔が浮かんだ。



試合後控え室へ戻る。目を覚まさない翼の横で、放心したまま私は座っていた。
引き止めていれば、こんな姿を見なくて済んだのだろうか。でも、この試合が全てだった彼を私に止めることができた?
「…?」
衣擦れの微かな音に顔を上げた。
「…なまえ」
翼は一つまばたきをしてまた目を閉じた。私はこちらへ伸ばされた翼の手を取って、弾けたように泣いた。

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