「ねえ、なまえ」
「何?」
特定の女というものが出来たら離れると思っていたファンに囲まれて、甘かったな、なんてガックリ。注目を浴びるのが苦手な私としては、この状況は酷く辛い。そもそもそれならチャウシンと付き合わなければいい話なのだけれど、まあ好きになってしまうとどうしようもないと言うか、相手に何か言って嫌われるのを怖がって大抵自分を押し潰すんだろうね。大体断るなら言い寄られたあの日にスッパリ出来たはずだ。何せ殆ど話したこともなかったのだ。きゃぴきゃぴなんてできるかよ、と、それでも遠巻きに眺めていた彼が、まさか声をかけてくるとは夢の話で、遊びなら取り巻きの子たちで充分でしょなんて言ったら
「んなわけねーって」
と、並べれば軽そうな言葉だが、嫌に真面目な顔で言われたのだ。ずっと見てきたけどこんな顔、テレビ中継の試合でも見たことない。初めて見るその眼差しに心臓持ってかれた。あれ、これじゃ断ることなんて最初からできなかったか。兎に角チャウシンこの男は本気だった。口説かれて早々はいベッドインとかだったらどうなんだよとか思って「お友達からで」とかどもりながら伝えたら、実際とても誠実なのだ。これでやっぱり付き合えませんなんて言える女子がいたら私そいつにどんな神経してるのか問いたいくらい。ちゃらんぽらんな癖に自分だけ大切にされたらそりゃあ卒倒する。正直他の子にも私みたいにこうやって接してるかもとか考えたけど、流石日頃から女といるからと言うか、私の態度とか汲み取ってくれちゃう訳で。不安だったところにやってきて、肩を抱いてきた。公共の場なんだけど、とか、まだ私彼女になった訳じゃないんだけど、とか、色々言いたかったけど無理だった。言う前に女たちに囲まれたのだから。
「え、チャウシンその子誰なの?」
度々二人でいるところは目撃されていたが、あからさまに見て分かるようなことは今までなかったせいか、ざわめきが起こらない筈もなく、あたりは騒然とする。芸能人のスクープかよ、とか頭のどっかで考えたけど、そう言えばチャウシンは芸能人になるのかな。こんな大勢の視線を浴びるのなんて慣れてなくて、私はパニックを起こしかけている自分を鎮めるのに必死だった。チャウシンが私の頬にキスして、周りの悲鳴が鼓膜をつんざいてやっと我に帰った。どうせチャウシンは私が彼のこと好きだって分かってたんだろうし、今更断るなんて所詮不可能なのでもう流れに任せよう。
「こいつ、オレの女だから」

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