キミだった。急に虚しくなるとふと顔が脳裏に浮かぶ訳で。オレには分からないが、これを俗に恋と呼ぶらしい。好きなものは好きだと思うが、人を心から想うとかそんな煩わしいこと考えてもみていなかった。
「はあー…」
「チャウシンどうしたのお?」「悩み事?」「でも困った顔もかっこいいー…」
女たちは相変わらずオレに群がるというのに、アイツはまったくと言っていい程やって来ない。むしろ避けられているんじゃないかとさえ思う。なんてこんなこと考える自分が女々しくて気色悪い。異性に寄られて嫌な気分になる訳がないのだが、どうやら最近は違うようで。悩んで立ち止まっていても仕方がない。柵に寄りかかっていた腕を下ろす。
「チャウシン?」「どこ行くのお?」
媚びるような語尾に聶が反応する。
「ああ、ちょっとねー…」
サングラスをかけ直して、女たちを撒くように、早足。そいつらの顔よりも、気取らないアイツの笑顔が見たい。確かに可愛いけれど、ファッションとかで側に置きたいだけじゃない。今頃はメイメイあたりとお茶でもしているんだろう。
「…まじで怠いな」
今までのオレだったら確実に自分から足を踏み入れることはなかった場所へ向かう。おかしな話、向かう足取りは軽い。
「もー、なまえはいつもね!」
「まあねー」
山奥に近付くと、ケラケラと笑い声が響いてくる。思わず心が揺れた。

鮮明に浮かび上がるはキミの顔

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